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zoom RSS キリストはエボリで止まった

<<   作成日時 : 2017/04/17 23:48   >>

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Cristo Si E Fermato A Eboli
カルロ・レーヴィ著 岩波文庫
☆☆☆☆★

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表紙の犬はバローネという名前です。

反ファシズム活動の罪で政治囚として一僻村に流刑に処された作者=主人公カルロ・レーヴィ(1902―75)が目のあたりにした、南イタリアの苛烈な現実。現代文明から隔絶した、キリスト以前から変わることのない、呪術や神話が息づく寒村での生活を透徹した視線で描きだす、戦後のイタリア文学を代表する傑作。(文庫解説より)

昔、どういうワケか「エボリ」というイタリア映画を劇場に見に行った。監督はフランチェスコ・ロージーで主演はジャン・マリア・ボロンテ。もともとアメリカ娯楽映画派の私ですが、80年代、20代の頃けっこうヨーロッパ映画を見ていた時期があって、「エボリ」もその1本。

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とても感動したのですが、以降、ビデオにもDVDにもならず私にとっては幻の映画状態でした。

つい最近、ふと「エボリ」はDVDになったかな?なんて調べていたら、この映画の原作が岩波から文庫版として発売になっているのに気が付き早速購入してみました。

原作者のカルロ・レーヴィは、1930年代に反ファシズム運動の罪で、南イタリアの寒村グラッサーノ村、次いでさらに貧しい村であるガリアーノに流刑となります。

この作品は、その時に彼が体験したイタリア南部の過酷な現実を、静かな美しい文体で綴った、ノンフィクションとフィクションの中間にある様な作品で、私は思いがけずも深い感動を味わされました。

村人たちは言う「俺達はキリスト教徒ではない。なぜならキリストはエボリで止まってしまったから。」 だから人間ではないのだと・・。

因習と苦難の中、歴史にも国家にも見捨てられた不毛の地。その乾ききった土地で、彼らは自分達独自の文化の世界を生きている。日本で言うと、ちょっと昔の東北より北の世界みたいなイメージの土地です。

イタリアの歴史や文化に詳しくないのではじめて知ったのですが、イタリアでは北部と南部に大きな格差があって、差別問題にまでなっているのですね。この問題は、現在でも解消されていないとの事。

北部のインテリである著者のカルロ・レーヴィが、流刑地の貧しさと人々の教育程度の低さに驚きながらも、人々の中にとけこみ、語りあい、交流を続ける、ちょっと神話でも読んでるみたいな不思議な日常風景が綴られていきます。

この作品の凄いところは、それらと並行して、虐げられている南部の問題をイタリア全体の問題として考察していく過程が実に理知的に語られていくところで、私はずいぶんとイタリアの一つの歴史について勉強させられました。

最も私が心を打たれたのは、著者のカルロ・レーヴィーの心根にある歪みのない博愛主義的な考え方でした。こういう人間がいるだけで、どれだけ世の中は救われるだろうと思った。実際、この著作のおかげで彼の流刑地は有名となり、近隣にある同じバジリカータ州のマテーラの洞窟住居は注目を浴びた事で世界遺産に選ばれたのだそうです。

キリストはイタリアを南下しながら、バジリカータの上にあるカンパニア州のエボリで止まってしまった。本の中に、地図がのっているのですが、そのページを何度も何度も見返しながら読みました。

私にとって大切な1冊になりました。

注 この地図は参考資料としてネットからお借りしたものです。(本に記載されている地図ではありません)

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キリストはエボリで止まった (岩波文庫)
岩波書店
カルロ・レーヴィ

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コメント(13件)

内 容 ニックネーム/日時
こんにちは。
私も80年代ヨーロッパ映画を少々見てた時期があったのですが、エボリという映画は知りませんでした。エボリを思わずGoogle Mapsで探しちゃいましたが、地理的にはナポリの少し南なんですね。マテーラはどこだろう?としばし地図上旅行を楽しみました。^^

私、イタリアはローマより北しか訪れたことがないので、南部はいつか行ってみたい憧れの地です。映画などで見る美しい牧歌的な風景を思い描いていましたが、それだけでは語れない格差の問題があるのですね。
今回ごみつさんがご紹介くださった本、是非読んでみたいです。
セレンディピティ
2017/04/19 14:34
セレンディピティ さん

こんにちは。
「エボリ」は確か銀座のスバル座で見たんだと思うのですが、以降テレビ放映もないし、日本語版のビデオとかも出なくって一度見たきりです。

そうそう、エボリはナポリのちょっと下あたり。マテーラはバジリカータのはじっこあたりですよね。バジリカータのさらに南にあるカラブリア州の事もあわせて気になっています。

私もこの本ではじめて知ったのですが、南部の人に対しては根強い差別意識があるらしいですよ。人間って、とにかく差別をしたがる生き物なんですね・・。

この本はイタリア版「遠野物語」っぽい雰囲気もあったりして、とても面白かったですよ。
ごみつ
2017/04/19 17:49
おお、こんな作品もあったのですね。読んでみたいです。
偶然ですが私、二箇月ほど前、図書館でリゴーニ・ステルンというイタリア人の作品に出会いました。ステルン先生はイタリア北部の出身でして。いかにも欧州という雰囲気の物語を書いていましたが・・・・・・・南イタリアはあまり欧州っぽくないのでしょうね。きっと。

レーヴィ先生は三十代の終わりから四十代の初めごろに大戦を経験したのですね?ステルン先生は二十代前半に修羅場をくぐり抜けたそうです。それぞれに苦しかったことでしょう。
だぶるえんだー
2017/04/19 22:55
だぶるえんだー 様

こんばんは!
これとても面白かったですよ。機会がありましたら是非。

この作品、映画を見ていなかったら決して読む事がなかったと思います。
こうして普段読まないタイプの作品を読むと、勉強になるし、おもいがけず新たな興味の対象もひろがったりしますね。

リゴーニ・ステルンさんは自然関係の著作を書いてるんですね。レーヴィ先生はもともとは医者だったのですが、途中で画家を志して、戦後は政治にも関わったみたいです。
きっと流刑地での経験が政治活動へ向かわせたのでしょうね。

私ももっと色々な作品を読まないとな〜。
ごみつ
2017/04/19 23:10
私もこの本は読んだことがないのですが、イタリアの南北問題は以前、大学の講義で聞いたことがあります。

元々イタリアは幾つかの都市国家が併存する地で、統一を果たしてからまだ150年位なんですよね。ミラノを中心とする豊かな北部同盟は、貧しい南部を足手まといだと思っている。

ナポリは数年前にゴミの収集事業が滞って、街中にゴミが溢れ返ったこともありましたね。これも、マフィアが北部から出た産業廃棄物を南部に不法投棄したことと関連があるようです。南部は北部のゴミ捨て場扱い。

ことほど左様に、北部と南部の経済格差と北部の南部に対する差別意識は南北の分断を招いているようです。

日本も都市と地方の格差は他人事ではないですけどね。

それにしても、聡明な人は何処にいても、何か足跡(結果)を残すものなんですね。転んでもタダでは起きない。

ごみつさんは私なんかよりよほど広いジャンルの本を読んでいらっしゃる。尊敬します。
はなこ
2017/04/26 23:06
はなこ さん

こちらにもコメント有難うございます!

はなこさん、イタリアの南部問題、大学で講義を聴かれた事があるんですね、羨ましいです。
私は、こんな差別問題があるって事を、この本ではじめて知りました。
確かに、日本でも中央と地方の格差はあるけれど、おそらくここまでではないと感じました。
歴史の流れの中で、いつしか生まれてしまったものなのでしょうけれど。

この本は、非常に素晴らしかったですよ。はなこさんももし機会がありましたら是非。
映画がDVDでも出てれば、そちらをとりあえずお勧めするんですけどね・・。私も映画を再見したいです。
ごみつ
2017/04/27 00:37
そういえば、先月読んだ雑誌で
「海は燃えている」
という映画作品が紹介されていました。イタリア南部の島を舞台にした社会派・・・・・・・・・の、はずなのですが、紹介者さんの目には主人公の少年時代のまぶしさが印象に残ったそうです。

監督は無念に思うかもしれませんが、作品の楽しみ方は観客の自由ですよね。どこに注目して見るか?人それぞれでしょう。
だぶるえんだー
2017/05/05 00:39
ごみつさん、ご無沙汰しています。

私は「エボリ」は公開よりかなり経ってからBSで見たのですが、さすがヴィスコンティ門下のロージーだけあって、厳しいリアリズムと南イタリアへの共感の眼差しが両立した佳作だと思いました。原作の訳が出ていたとは知らなかったので、早速私も読んでみようと思います。

私もローマより南には行ったことないのですが、ナポリやシチリアにすっかり魅了された日本人の知り合いが何人もいて、いつか絶対行きたい!
「流刑」って島流しのイメージがあるのですが、陸続きの土地に流されるというのが、まずすごい。私の大好きな女流作家ナタリア・ギンズブルグは夫がやはり南イタリアに流刑にされ、彼女は子ども達を連れて夫に同行してその地で赤ちゃんを産んでいます。このへんは緩いっちゃ緩いのかも。
私が今思い出して印象に残っているのは、レーヴィは医学の心得があったので、村人に有り難がられているところ。それから葬式の場面で「泣き女」がいましたよね?以前イタリア語の先生に、昔、南イタリアには泣き女がいたと聞いてたので、あ、これか!と思いました。

私は北にしか知り合いがいないし、南北格差を肌で実感したことはないのですが、私が留学していた20数年前はレーガ・ノルド(北部同盟)が話題になっていました。北と南で違う国になって貧しい南部を切り捨てるという趣旨の。最近はあまり聞かないのですが、EU統合に飲み国内の南北問題どころではないというところなんでしょうか?何年もイタリアに行っていないので、的外れなこと書いているかもしれませんが…

2,3月健康状態最悪で、下高井戸シネマのヴィスコンティ特集を一本も見られなかったのですが、南イタリアを舞台にした名作「揺れる大地」はスクリーンで見たかったなあ。

2017/05/05 01:30
いつも誤字脱字すみません。「EU統合に飲み込まれ」です。

2017/05/05 01:32
だぶるえんだー 様

こんばんは!
「海は燃えている」知りませんでした。
今、チェックしてみましたが、確かに社会派ドラマですね。
本当に知らないだけで、世の中は様々な問題が起きているんだな・・とあらためて思わされました。
いつか見てみたいです。

映画の舞台になってるランペドゥーサ島はシチリアのさらに沖合南にある島なんですね。

映画の感じ方は人それぞれですよね。監督の意図したテーマ通りに観客に伝わるかどうかはわからないけれど、それでも人は何がしかの印象を作品から感じるワケだし、それはその人だけの大切なものだと思います。

それにテーマが強烈な印象を残さず、美しいシーンだけが印象に残ったとするならば、心にそれが残ってしみじみと後からテーマに気がつく場合もありますしね。
ごみつ
2017/05/05 21:05
夏 さん

こんばんは!
コメント有難うございます。
実は今度お会いする時に、この作品の背景について夏さんに聞いてみようかな・・って思ってました。

「エボリ」BSでやってたんですね!何しろ見たのが1回きりでかなり前なので、細かいところはまったく覚えてないのですが、凄く良い作品だった・・っていう感動だけが記憶に残ってるんですよね。

これ、原作、良かったですよ!今度、持っていきますので、是非読んでみて下さい。
きっと夏さんの方が、色々と理解できるところが多いと思います。

そうそう、レーヴィはもともと医者だったのですが、画家に転身したんですよね。流刑地にインチキな医者しかいなくて、彼は村人から貴重なお医者様として人気ものになるんですよね。治せなくて患者が死んでも、最後まで真摯に看てくれた・・っていう事で尊敬を集めていた様です。
バローネっていう犬を連れてるんですが、この犬が可愛いですよ〜。

せっかくの下高井戸ヴィスコンティ特集、残念でしたね!また機会があると良いですね。

それではお会いする日を楽しみにしてますね〜。
ごみつ
2017/05/05 21:15
ごみつさんこんばんは🍄
この本読んでみようと思います。
私はアリアーノの近くのマテーラに行ったことがあります。洞窟の住居はよくここに住んでいたな、と思うすごい所でした。そこで私が実際経験したのは、今まで遭遇したことのないくらいの大きな人の優しさに触れて、涙が止まらなくなった場所でした。あれは、北部イタリアでは、ましてや日本には存在しない、富や利害を本能的に計算するあざとさのようなものが一切存在していない、心の豊かな人達のような印象でした。
南イタリアが貧しいのは知っていましたが、そんな被差別意識の高い場所だったのですか。

南イタリアは世界で一番好きな場所なので、私も勉強してみようと思います。
dumbo
2017/05/06 00:05
dumbo さん

こんばんは!
dumboさん、マテーラに行った事あるんですね!凄〜い。

洞窟の住居、この本の中にも出てくるんですが、当時(1930年代)は本当にひどい状態で、マラリアでたくさんの人が亡くなったりしてたんですよね。
そんな南部の寒村の様子をとても美しい文章で記述しているので、是非是非お勧めです。

dumboさんが感じた様な事を、作者のレーヴィも感じたのかもしれませんね。また旅行の時のお話も聞かせて下さいね。

ところでGWはほぼ出勤で、展覧会、せっかくご案内いただいたのに、伺えなくて本当に残念です。スミマセン!次の機会を楽しみにしていますね!
ごみつ
2017/05/06 23:45

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