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zoom RSS 現代語訳 樋口一葉 全5巻

<<   作成日時 : 2017/11/29 21:53   >>

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以前、今井正監督の「にごりえ」と言う映画を見て感動した私は、早速書籍を読もうと思い文庫版を物色してみたところ、オリジナルの文章では読めない事がわかり断念。

樋口一葉の文章は雅俗折衷文(がぞくせっちゅうぶん)と言って、明治の初期、江戸時代からの言葉と明治に入ってからの言葉との丁度橋渡し的にとても短い期間使われていた文体なのだそうです。

この文体は地の文は雅文(文語文)で書かれ、会話は口語文(俗文)。なおかつ、一葉の文章は句読点がほとんどなく、章の変わり目まで流れる様に文章が綴られていくので、少なくとも昔の文章を知らないと読むのはかなり難しいんですよね。

と言う事でそのまま、一葉は諦めていましたが、先日図書館で今回読んだシリーズを見つけて嬉々として読んでみました。

出版社は河出書房新社。多くの作家さんによる現代語訳なので、その作家さん、作家さんならではの訳し方の違いも面白く、明治時代の風俗の中に身を置くかの様な時間を楽しめました。

「大つごもり 他」
島田雅彦 訳
☆☆☆★★★

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代表作のひとつ「大つごもり」と「われから」の二篇収録。
「大つごもり」とは大晦日の事。貧困と病気に苦しむ恩ある伯父のために奉公先から2円を盗んでしまったお峰。
「われから」は美貌の人妻を襲う悲劇のお話です。

「十三夜 他」
藤沢周 篠原一 阿部和重 訳
☆☆☆★★★

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「十三夜」「わかれ道」「やみ夜」の三篇収録。
「十三夜」は離婚を決意した女性が実家で諭され帰る途中で、かつて思いを寄せていた男が車引きになっているのに出くわすお話。
「わかれ道」妾にいく事になったお京と、彼女を幼い頃から慕っていた傘屋の奉公人、吉三との別れを描いたワンシーンもの。
「やみ夜」は、婚約者から裏切られた女性と、漂白の青年とが、心の闇をわかちあい、ある行動を起こし破滅していく話で、一葉作品の中では最もドラマチックなダークストーリーでした。

「にごりえ 他」
伊藤比呂美 訳
☆☆☆★★★

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「にごりえ」「この子」「裏紫」の三篇収録。

「にごりえ」は結婚してしまった愛人への気持ちもたちきれないまま、自暴自棄の日を送る銘酒屋のお力の姿を通して、社会の底辺で生きる女の姿を描いた作品で、やはりこれも代表作の一つです。
「この子」夫婦仲がうまく行っていない夫の子供を産むのが嫌で嫌で苦しんでいた女房が、他の何よりも生まれた赤ん坊が愛する存在となるまでの心情を全編口語体で描いた作品。珍しくストレートな感動作。
「裏紫」は結婚前から恋仲であった男と、夫へ良心の呵責を感じながらも、逢瀬を続ける女の心情を綴った作品。

「闇桜 ゆく雲 他」
井辻朱美 角田光代 多和田葉子 山本昌代 訳
☆☆☆★★★

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「闇桜」「ゆく雲」「うもれ木」「うつせみ」「雪の日」の五篇収録。

「闇桜」は一葉の処女作。幼馴染の男性に恋心を伝えられないまま、恋にやつれて命を落とす少女の繊細な姿を描いた作品。
「ゆく雲」は望まぬ結婚のために帰郷した青年が、思いを寄せていた女性に一生便りをすると誓いながら、やがて安穏とした暮らしの中でそれを忘れていくお話。
「うもれ木」は詐欺にひっかかった天才肌の陶器画工の話で、「やみ夜」と同じくドラマチック、かつ最も残酷なストーリーでした。
「うつせみ」は自分を恋い慕うが故に自殺してしまった青年への罪の意識から狂気へと陥っていく女性の話。
「雪の日」育ての親でもあった伯母を捨て、愛する男を追いかけて出奔した娘。恋焦がれて追いかけた夫はつれない存在となり娘の心に残るのは、恩人であった叔母への仕打ちへの深い悔恨のみであった。

「たけくらべ」
松浦理英子 訳
☆☆☆☆

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一葉の代表作。吉原界隈を舞台に、千束神社の夏祭りから大鳥神社の酉の市にかけての季節めぐりの中で、この界隈に住む子供たちの世界がくりひろげられていく。やがては遊女になる大黒屋の美登利と僧侶になるべき龍華寺の信如の淡い恋心の交錯を中心に描かれた作品。

子供が主人公らしいという事と、中編という事もあり一番最後に読んだのですが、これは確かに傑作です!文章の出来が他の短篇とは格段に上。訳された松浦理英子さんも一葉は「たけくらべ」につきると言われた上で、何とかがんばって原文を読んでみてもらいたい・・みたいな事を後書きでおっしゃていました。

樋口一葉は、作家活動たった1年半。文壇からも絶賛されながらも、肺結核のため24歳の若さで世を去っています。もしももう少し長生きされていたらどんな小説を発表しただろう・・と思わされました。

彼女を作品を読みながら思ったのは、明治初期の女性の置かれた立場の過酷さ、そしてそれ故に生まれてくる儚さや内面の苦しみ。一葉は女性のそんな心情を繊細な筆致で、彼女に与えられた時間の限りに発表していったんだなと思いました。

そしてもう一つ、確かに世の中は進歩して、昔よりも今の方が格段に良くなっているのは確かなのだけれど、その過程で、日本の文化、言葉、しぐさが持っていた美しいものをどれだけ捨て去ってきてしまったのだろう・・という気持ちにもなりました。

お札の肖像画(しかも5000円)になるだけあって、やっぱり凄いね、樋口一葉!と感心する事しきりな読書時間でした。

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コメント(2件)

内 容 ニックネーム/日時
おはようございます。
人気の作家さんたちが、リレー形式で現代語訳で書かれている全集っておもしろい企画ですね。それぞれの文体の違いもあわせて楽しめそうです。
たけくらべは、昔子ども向けに書かれたものを読んだことがあります。たしか山口百恵・三浦友和で映画化もされてたような...と思ったら、どうやら春琴抄と勘違いしていたみたい。^^;
久しぶりに再読してみたいです。
他の作品もどれも短編なので、比較的気軽に読めそうですね。女性作家の世界を堪能してみたいです。
セレンディピティ
2017/11/30 09:03
セレンディピティ さん

こんばんは。
コメント有難うございます。

今回、たけくらべも含めて、一葉の作品、はじめて読みましたが、良かったですよ〜。
もう現代では望むべくもない世界を描いた物語の数々でしたし、当時の世相を感じとる事ができて貴重です。

全5巻ですが、どれもとっても薄くてさっくりと読めちゃいますよ。大勢で訳されてるので、訳者さんごとの味わいを感じる事が出来るのも楽しかったし、後書きも面白かったですよ。

このシリーズ絶版なのですが、最後のアフィリエイトで紹介してる河出文庫版がこのシリーズのセレクションみたいです。
ごみつ
2017/12/01 01:43

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