夏の読書記録

7月から9月にかけて読んだ本、6冊をまとめて記録まで。

北方謙三「水滸伝」読了!!
集英社文庫
☆☆☆★★★

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2010年から読み始め、2014年に16巻まで読んでいた北方謙三氏の「水滸伝」。私の愛する中華歴史世界の匂いが全くしない作品でもてあましつつ読んでいたところ、オリジナルの「水滸伝」世界を知ってしまい、途中で投げ出してしまっていました。

全19巻で、残りあと3巻だけという事もあり、先日ふと思い出した際に図書館で3巻とも借りてきて読了いたしました。足かけ7年かかりました。

結局、北方ワールドのまま、志(北方「水滸伝」のメインテーマ)が果たせないまま梁山泊は滅びてしまいましたが、その志は楊志の息子、楊令に託されました。このストーリーは「楊令伝」に続きますが、もう私はここでお終いです。

決して悪い作品ではないし、北方先生はとても誠実なそして大変な仕事を成し遂げたと思います。ただ、これ中国人のお話じゃないんですよ・・。中国の歴史世界じゃないんです。あの、鬼畜物語みたいなオリジナルの「水滸伝」こそが中国なんです。

北方先生がテーマとした「男の志、男の行き様」みたいなのは、私にはどうにも相容れなかったのは残念でしたが、大作を読み終えて充実感も味わえました。

「スマホを落しただけなのに」
志駕晃 著 宝島文庫
☆☆☆★★

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麻美の彼氏の富田がタクシーの中でスマホを落としたことが、すべての始まりだった。拾い主の男はスマホを返却するが、男の正体は狡猾なハッカー。麻美を気に入った男は、麻美の人間関係を監視し始める。セキュリティを丸裸にされた富田のスマホが、身近なSNSを介して麻美を陥れる凶器へと変わっていく。一方、神奈川の山中では身元不明の女性の死体が次々と発見され…。(文庫解説より)

この作品は、私の職場の書店の夏のお勧めタイトルの中の1冊。宝島社の「2017年このミス大賞」からははずれたものの、期待の作家の「隠し玉」としてプロモーションされています。読んでみて良ければ私も宣伝をかねて記事にしようと思っていたのですが、楽しめたものの、ミステリーを読みなれている人にはちょっと物足りない作品でした。

SNSの怖さが身につまされる内容は今の時代にピッタリなのですが、いかんせん、登場人物のキャラクター造形の弱さが難。驚愕のラストも、私はかなり早くからオチが見えてしまってその通りだったのもかなり残念。ラノベミステリー感覚で楽しみたい方にはお勧めです。最初から最後まで楽しめるのは確かです。

「私の沖縄戦記 前田高地・六十年目の証言」
外間守善 著 角川ソフィア文庫
☆☆☆★★★

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昭和20年3月25日、本土防衛の犠牲となった戦闘は、米軍の艦砲攻撃で始まった。中でも「ありったけの地獄をひとつにまとめた」と米軍に言わしめた前田高地での激戦は壮絶を極めた。爆風に吹き飛ばされ、機関銃の乱射を受ける日々、繰り返すゲリラ戦。武装解除後、800名の大隊は29名となっていた―。終戦後に出された多くの資料をふまえた、一個人の体験に留まらないスケールの戦記。沖縄学の第一人者による貴重な記録。

映画「ハクソー・リッジ」の後に読んだ1冊。著者の外間守善(ほかましゅぜん)氏は、19歳で入隊し沖縄最激戦地で戦い生き残ったたった29名のうちのお一人で、法政大学の名誉教授です。

多くの生き残りの方がそうである様に、外間氏も長く戦争に関しては、思い出したくない、言葉にする事など出来ないという思いからあまり多くを語ってこられなかったそうなのですが、80歳になられた時に証言を残せる者がいなくなるという思いから、存命の方からの聞き取りをはじめ、この著作を残されたとの事です。

尚、この著作では、米軍の捕虜になってからのあれこれ、沖縄がアメリカの占領地になる前に最後の引揚船(本土の人間だけしか乗れない船にもぐりこんだ)に乗って日本本土に渡るまでも語られています。

映画では語られなかった日本軍の様子がよくわかりますので、「ハクソー・リッジ」で感銘をうけた方は是非読んでみて下さい。外間氏は米軍の資料もとりよせて、その中に「ハクソー・リッジ」の主人公デズモンド・T・ドスに関する記述もあります。


「水蜜桃の夜」
ジョージ朝倉 著 講談社別冊フレンドコミックス
☆☆☆★★

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触れたら私、はじけてしまう。「恋文日和」に続く、ジョージ朝倉待望のKC!痛くて切ないラブストーリー集。夏がジリジリ音を立てる。暑さに思考が灼き切れる。真っ黒に潰れたあたしの中で、想いだけがただ、熟れていく――。血のつながらない兄への許されない想いを描いた表題作ほか、失踪した恋人との切ない思い出を綴る「失踪日和」、幼なじみの淡い恋「赤いソーダ水」など5編を収録した珠玉の短編集!!

コミックはほとんど読まないのでここに追加で。先日、記事にした「ハートを打ちのめせ!」が凄く良かったので、もう少しジョージ朝倉さんのマンガスタイルが知りたくて購入。

これは短篇集なので、これを読んで、朝倉さんが持っている萌えポイント(ロマンチシズムのありどころ)がよくわかりました。幼馴染と、教師と生徒、それとバカな男、バカな女の純愛。これがすべて「ハートを打ちのめせ!」に入ってましたよ。私にとってはたぶん、教師と生徒がツボなんだと思います、(笑)ツボにはまると恋愛マンガも楽しいな!

小粒ですがとても良いマンガでした。

「日本の黒い霧」上下
松本清張著 文春文庫 
☆☆☆★★★

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上巻 戦後日本で起きた怪事件の数々。その背後には、当時日本を占領していた米国・GHQが陰謀の限りを尽くし暗躍する姿があった。しかし、占領下の日本人には「知る権利」もなく真相を知る術もなかった。抜群の情報収集力と推理力で隠蔽された真相に迫った昭和史に残る名作。名推理として知られる「下山国鉄総裁謀殺論」など。

下巻 戦後日本で起きた怪事件の背後に何が存在したのか。米国・GHQの恐るべき謀略に肉薄した昭和史に残る名作の続編。戦後の混乱を生々しく伝え、今日の日本を考える貴重な資料である。日本中を震撼させた「帝銀事件の謎」、被告の冤罪を主張する「推理・松川事件」、横暴な権力への静かな怒りに満ちた「追放とレッド・パージ」など。

読み応えありすぎ!けっこう難しくて読み終わるのに時間がかかりました。ひとつの記事にしても良かったのですが、内容が複雑すぎて私自信が消化しきれていないのと、ブログ記事があまりにたまりまくてしまってるのでここで簡単に。

戦後GHQ占領下で起きた様々な怪事件をとりあげ、それがGHQの謀略によるものだと言う事、すべての怪事件はやがて「朝鮮戦争」の下地へとつながっていく事を、一つづつ謎解きの様に推理していく内容です。この作品が執筆されたのが1960年(昭和35年)。終戦わずか15年後に書かれたこの作品はかなりの物議を読んだのではないでしょうか?っていうか、松本氏のこの調査能力が凄すぎる!

GHQ陰謀論に取りつかれている、反米思想の持ち主だ、専門家でもないくせに等、当時はあれこれ言われたそうですが、これらの事件の真相が明かされるのは、きっとこの戦争が遠い歴史のかなたになった時なのでしょうね。

以下がとりあげられている事件です。

上巻 下山国鉄総裁謀殺論 「もく星」号遭難事件 二大疑獄事件 白鳥事件 ラストヴォロフ事件 革命を売る男・伊藤律

下巻 征服者とダイヤモンド 帝銀事件の謎 鹿地亘事件 推理・松川事件 追放とレッドパージ 謀略朝鮮戦争

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この記事へのコメント

セレンディピティ
2017年10月06日 17:09
こんにちは♪
7年かけて16巻ってすごい長期マラソンですね。なるほど北方風ハードボイルド水滸伝に味付けされているのですね。^^なにはともわれ、読了おめでとうございます。

この中で気になるのは、「私の沖縄戦記」「日本の黒い霧」ですが、どちらも読むには覚悟がいる作品のようですね。
本土の人しか乗れない船にもぐり込む、ってダンケルクのギブソンを思い出しました。^^;
松本清張さんの小説は読み始めるととまらなくなるものが多いですが、この本はなかなか骨がありそう...でも読んでみたいです。すごい取材力ですね。
ごみつ
2017年10月07日 01:56
セレンディピティ さん

こんばんは!
コメント有難うございます。

水滸伝はもう読むの中止!って思ってたのですが、「あとたった3巻だ・・」と思って読了させました。
スッキリしましたよ~。(笑)

「私の沖縄戦記」は、わりとサラリとした内容でした。当事者だからこそなんでしょうね。心の中の全てはきっと記述できないだろうと思います。
そうそう、外間さん、本土に家族が疎開していたので、何とか会いたくて密航?したんですよね。同じ日本人だから、ギブソンよりは簡単だったと思います。(^_^;)

「日本の黒い霧」はこれ凄い作品ですよ。けっこう難しいです。でも持ってて、ちょっとづつ読んでも良いと思う。
松本氏の推理があってるかどうかは別にしても、貴重な昭和の記録だと思いました~。
だぶるえんだー(機械音痴)
2017年10月07日 21:13
ぼくはよく翻訳もの歴史小説を読むのですが、読みながら
「これを書いた人、どこかで戦争を経験したのでは」
と感じることがあります。敵軍が撃ち始めた途端バリケードが低くなったような気がした。とか。初陣より二度目の方が怖いとか。そういう不気味な(良く言えば迫力がある)描写が時折見られまして。

ぼくも、五十年早く生まれていたら、戦火をくぐり抜けていたのでしょう。それはともかく東郷隆の
「木の上」
もお奨めです。死闘の中、一瞬だけつながりあう米兵と日本兵の心・・・・・・。あ、まえにもお勧めしたかなこれ。それから
「真空管の伝説」
と言う本は、太平洋戦争の意外な側面を描き出しています。はーーーーー!!こんなこともあったのか。
ごみつ
2017年10月07日 23:17
だぶるえんだー(機械音痴)様

こんばんは!
コメント有難うございます。
だんだん、涼しくなってきましたね~。

ご紹介の2冊、教えていただくのははじめてですよ!
東郷隆の「木の上」は、「銃士伝」っていう本の中の一編みたいですね!「真空管の伝説」もどちらも面白そう!

ちょっと前に近所の図書館に入会したので、今度探してみますね。なかなか読書も時間がおっつかず、せっかくのご紹介本をなかなか読めずにいますが、お勧めいただいたのは記録してありますよ!
いつも有難うございます。

私たちはとりあえず、戦争の悲劇をまったく経験せずにきているので、本当に幸運な世代だと思います。
それでも、子供の頃はまだ何となくその傷跡を感じるものが残っていたし、親からも話を聞かせられたりしてますよね。

いずれまったく何も知らない世代ばかりになるので、SNSなんか見てても危機感を感じる様になってきましたよね。

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