故郷/阿Q正伝

魯迅著 藤井省三訳 光文社古典新訳文庫
☆☆☆★★★

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久しぶりに再会した幼なじみは、かつて僕の英雄だった輝きを失っていた…「故郷」。定職も学もない男が、革命の噂に憧れを抱いた顛末を描く「阿Q正伝」。周りの者がみな僕を食おうとしている!狂気の所在を追求する「狂人日記」。文学で革命を起こした魯迅の代表作16篇。(文庫解説より)

前から読みたい、読みたいと思っていた魯迅をやっとこさ読んでみました。

とにかく衝撃だったのは、私、魯迅の代表作である「阿Q正伝」についてとんでもない思い違いをしていた事がわかった事でした。

何て言うか、魯迅は孫文とかと同時代人で、清朝の崩壊とその後の混乱の時代を見てきた方なので、てっきり政治色の強い重たい作品だと思い込んでいたんですよね。

ああ、そしたら、この作品・・これね、この文章のスタイルは夏目漱石なんですね!

「阿Q正伝」はまんま辛亥革命の時代のお話です。とある村の最下層の生活をしている阿Q。彼は不細工で字も読めず、家も金も女もない。しかも性格が悪いんですよ。

彼の長所はどんな逆境も、自分の都合の良い様に解釈して、決してへこたれる事がない事。悪いのは自分ではなく、全て他人のせいなので、決して傷つかないのです。弱いものはいじめ、強いものには心の中では毒づきながらもへつらう。そしてプライドが異常に高い。

彼の物語が、もう本当に面白ろおかしく飄々と語られていくのですが、革命党が自分の村にやってきた時、意味もまったくわからないまま、運動に参加。そして全くの無実の罪を着せられ、頭が悪いので何の弁明もすることなく、銃殺されてしまいます。

「凄いな、凄いな」と読みながら、これが当時の中国人の姿をカリカチュアした姿である事がはっきりとわかりました。だって、中国歴史ドラマに出てくる愚かな民って、みんなこんな感じだもん!(;'∀')

共産党が中国を完全制圧する前の時代に、しばらくの間だけ姿を見せていた、中国現代小説の見事な誕生の瞬間だったんだな・・と感慨深かったです。

他の短編は、すべて私小説の様な感じで、どれも面白く読めましたが、やっぱりこの「阿Q正伝」が圧倒的です。中国の文化に興味のある方には絶対にお勧めです!

魯迅(左)と内山完造氏(右) 今は神保町にある内山書店の創業者の方。歴史ある書店さんなんだな~。(1933年、上海にて撮影)

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この記事へのコメント

ヌマンタ
2018年04月02日 09:51
阿Qの姿は現代の華人となんら変りわないと嘆いたのは、1970年代の台湾の栢陽です。私からすると、2018年になっても、その精神的な在り様は変わっていない気がします。そんな人たちが世界各地に広がっているのだから恐ろしい。そりゃ、トラブルも増えますわな。
ごみつ
2018年04月03日 00:43
ヌマンタ さん

こんばんは!
コメント有難うございます。

栢陽っていう方の名前、はじめて聞きました。調べたら中国語のサイトしか出てこなかったのですが、思想家、歴史家、作家なんですね。

それにしても長い歴史の中で、一度出来上がった国民性っていうのはなかなか変化するのも難しいのでしょうが、やっぱり教育が大事なんだろうと思います。

最近はどうなんでしょうね?さすがに阿Qレベルに人はかなりいなくなったとは思いますけど・・。(;'∀')

それにしても魯迅、面白かったです!

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