プラド美術館展 ベラスケスと絵画の栄光

上野の国立西洋美術館で開催中の「プラド美術館展」に行ってきました。

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https://artexhibition.jp/prado2018/

スペイン王室の収集品を中心に1819年に開設されたプラド美術館。今回の展覧会はヴェラスケスの作品7点を含む、17世紀絵画の傑作を集めた企画展です。

非常に素晴らしい展覧会でしたが、見に行ってから少し時間が経ってしまった事と、17世紀絵画について私の中で消化しきれていないので、今回の記事ではヴェラスケスの5点の絵画についてだけ感想を書かせていただきました。

ベラスケスが生粋のスペイン人である事、そして同時代のスペインの画家達の作品の中でも、その表現力において、他の追随を許さない力量を感じ、この展覧会に関してはほぼ全ての印象が、私の中ではヴェラスケスの絵画に集約されている事に時間がたってみると気が付かされた事も理由です。

展覧会はテーマ毎に9つのパートに分かれていました。詳細は上記のHPで確認していただければと思いますが、まず最初に強い印象を受けたのが第3章の「神話」での、ヴェラスケスの作品「マルス」

マルスはローマ神話の中の軍神ですが、ヴェラスケスはその英雄神をちょっとお疲れ気味の中年男として描いています。これって結構画期的ですよね!その理由はヴェラスケスに聞いてみない限りわからないけれど、私はこのあまりにも世俗的な軍神の姿にとても惹きつけられました。

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続いて第4章の「宮廷」のパートにおける、「狩猟服姿のフェリペ4世」

スペイン国王のフェリペ4世は政治家としては大きな功績を残していないものの、善良な王で国民には慕われていたそうです。彼の最も大きな功績は芸術の目利きであり、多くの才能溢れる芸術家を庇護し、当時ヨーロッパ最高の美術コレクションを築いた事。このコレクションが「プラド美術館」の礎となる。

ヴェラスケスは肖像画家としての才能も確かなものがありますよね。

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同じく「宮廷」パートにおける「バリェーカスの少年」

当時宮廷では、矮人や障害のある人達が慰みの人々として仕えているのが普通だったそうで、この絵画の少年は、本名フランシスコ・レスカーノ、王太子バルタサール・カルロスの遊び相手だったそうです。

この表情の素晴らしさよ!当時の社会を生きていた人々の息遣い、心臓の鼓動まで聞こえてきそうです。この被写体の自然な描写こそが、ヴェラスケスの凄さですよね。

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今回の展覧会のポスターにもなっている第5章「風景」のパートの「王子バルタサール・カルロス騎馬像」

とっても可愛い。小さな王子が勇壮に見える様に馬が不自然の縮まった形で描かれてますが、それが不自然に感じられないのが、絵画の表現力と言うものなんでしょうね。

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フェリペ4世の子供たちは多くが幼くして亡くなっていて、バルタサール・カルロスも16歳で病死しています。次のスペイン国王となったカルロス2世も病弱で様々な障害を併発、38歳で亡くなっています。これは近親婚を繰り返しすぎた事が理由とされているそうですが、ここでスペインのハプスブルグ家は断絶します。

昔の絵画は背景にある歴史をちょっと調べてみるのも面白いものですよね。

最後、第7章「宗教」のパートでの「東方三博士の礼拝」この絵画はヴェラスケスがまだ宮廷入りする前、20歳の頃の作品です。この絵画は自分の家族がモデルになっていて、マリアは妻のフアナ、イエスは生まれたばかりの自分の長女フランシスカ、三博士のうち手前にひざまずくメルキオールがヴェラスケス本人、そのすぐ後ろにいる横顔のひげの老人が師匠であり舅でもあるパチェーコなのだそうです。

宮廷画家になる以前、まだ若い画家の素朴な表現が心に残る1作。

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7点中の残り2点は鑑賞した時の印象が思い出せないので、作品だけアップしておきます。(;^ω^) 

「ファン・マルティネス・モンタニェースの肖像」 この人は同時代のセビリアの彫刻家との事。

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「メニッポス」 メニッポスは古代ギリシャの哲学者。ヴェラスケスはその偉大な哲学者をスペインの武骨な老人の姿で描いた。

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会期は5月27日まで。GWが終わったらかなりすくと思いますのでお時間のある方は是非。今回、ヴェラスケスだけの記事ですが、他にもルーベンス、エル・グレコ、ブリューゲル等、素晴らしい作品がたくさん展示されておりますよ。展覧会はその後、兵庫県立美術館へ巡回します。

最後に今回もはなこさんにチケットをプレゼントしていただきました。はなこさん、有難うございました。

この記事へのコメント

セレンディピティ
2018年05月07日 08:53
ごみつさん、こんにちは。
プラド美術館、昔々に訪れましたが、さすがにもうほとんど覚えていません。裸のマハ、着衣のマハなどは、印象に残っていますが...。
やはり時々記憶をアップデートさせないといけないですね。
今回はサブタイトルにもあるようにベラスケスにフォーカスした企画展なのですね。
ご紹介くださった肖像画の数々、人間味が感じられてとても魅力的ですね。最初の軍神なんて、蚤とり侍の阿部寛さんみたいじゃない?(かなり失礼^^)
すてきな時間をすごされましたね。
kinkacho
2018年05月07日 19:37
ごみつさん、こんにちは。
この展覧会は関西にも回ってくるので、今から楽しみにしています。
ベラスケスは画家としてだけではなく、外交官としても多忙で過労死したというエピソードが忘れられません。
また史学科友達と歴史で盛り上がりながら楽しみたいと思っています。
ごみつ
2018年05月08日 00:52
セレンディピティ さん

こんばんは!
セレンさんは、本場のプラド美術館へ行かれた事があるんですね。うらやましいです!
なかなか現地には行く事が出来ないので、こういう企画展は本当に有難いものです。

ヴェラスケスは今回7点しか来ていないのですが、その他の作品群の中でもダントツで素晴らしかったです。
それでも、他にもたくさん見事な作品がありました。

そうそう、この軍神が、ホントに普通のおじさんなので、けっこう目をひきます。
二日酔いで目覚めた朝みたいです。(笑)
ごみつ
2018年05月08日 00:55
Kinkacho さん

こんばんは!

そうそう、6月から兵庫ですよね。お楽しみに~。
ヴェラスケス、良かったですよ。
いつか、彼の代表作、「ラス・メニーナス」をこの目で実物を鑑賞してみたいです。

へ~、ヴェラスケスって外交官としても仕事してたんですね。しかし、その仕事で過労死とは気の毒だな~。
2018年06月09日 16:24
ごみつさん、ご無沙汰しております。絶賛放置中の拙ブログの先月の更新時にコメントありがとうございました。

「プラド美術館展」私も行ってきました。素晴らしい展示でした!最近は優秀なキュレーターが増えたのでしょうね。限られた点数でもとても良い作品をチョイスしてくれて日本に居ながらにして上質な西洋絵画を鑑賞出来てとてもうれしいです。

「バルタサール・カルロス」は別格として、今回私が一番気に入ったのは、「メニッポス」でした。なんとなくモデルは宮廷俳優かなと想像していますが、過去に生きた人間の息づかいを感じさせるという点では、ベラスケスはある意味、神に近い存在の画家かな、と…
それと「バリェーカスの少年」。大学の西洋美術史の講義で、ベラスケスの研究家の大高保二郎先生が、バリェーカス他の宮廷の道化師たちの肖像画について「こういった作品を観ると、人間は存在しているだけで尊厳があるのだと分かる」と仰っていたことが今でも忘れられません。世間から卑しまれていた人達を見下すことなく同じ目線から描いているのがベラスケスの偉大たる所以だと思います。
今回ティツィアーノのとても上質な作品「音楽にくつろぐヴィーナス」が観られたのもうれしかったです。それから若い頃嫌いだったルーベンスもいいな、と思えるようになったことが収穫かも(汗)

ルーヴル美術館展も始まりましたが、こちらは並ばないで入れるでしょうか…
ごみつ
2018年06月10日 01:37
夏 さん

お久しぶりです!
お忙しい中、コメント有難うございます。
今は色々と大変かと思います。あまり無理はせずご自愛くださいね。

夏さんも「プラド」行かれたんですね!
引っ越してからあまり美術展に行けなくなってしまいましたが、やっぱり美術鑑賞は良いですよね。
気持ちがとてもリフレッシュされる感じがします。

今回、ベラスケス以外の作品もとても良かったですよね。それにしても、今回の美術展は個人的にはベラスケスにつきる感じでした。展示されてた作品はどれも凄かった!

そうそう、やっぱり天才画家の作品って、モデルの息遣い、生きていた証を感じる事が出来ますよね。
「ああ、この人、とある時代、とある場所で、本当に生きていたんだな・・」っていう感動。
ベラスケス以外だと同じ感動を覚えたのは、カラヴァッジオかな。

それにしても美術館コレクションの展覧会はどれもホントに混みますよね~。ルーヴルの肖像画展も見たいな~。プーシキンも行きたかったんだけど、こっちはもうすぐ終わるので無理そう・・。

今度お会い出来た時は、美術のお話なんかも聞かせて下さいね~。

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