野菊の墓

「野菊の墓」
1981年/日本 (監)澤井信一郎
(演)松田聖子 桑原正 島田正吾 加藤治子 樹木希林 村井国夫 赤座美代子 湯原正幸 常田富士夫 叶和貴子 愛川欽也 白川和子 丹波哲郎
☆☆☆★★

画像


伊藤左千夫による同名小説の三回目の映画化。1955年、1966年の映画化作品は「野菊のごとき君なりき」というタイトルになっています。テレビドラマ化作品は幾つもあるみたいなのですが、本作を見るのは私は今回が初めてです。テレビ放映を録画して鑑賞。

お遍路の旅に出た老人(斎藤政夫)が、旅の途中で自分の過去を振り返り、十五歳の時に慕いあった十七歳の民子との日々を回想する形式になっていました。

画像


幼馴染であった政夫と民子は、お互いに恋心を抱く様になる。2人を一緒にさせる気のない母親のきくは、政夫を全寮制の中学校に入れ、その間に民子の縁談を進めてしまうが、慣れない軍人の家での生活に心身ともに疲弊した彼女は流産しそのまま息をひきとるのだった・・。

画像


松田聖子主演という事で、文芸映画とは言え、アイドル映画の域は出ないだろうな・・と思ってたのですが、誠実につくられた佳作でした。松田聖子の演技はうまくないし、相手役の政夫を演じた桑原正も一般からのオーディションで選ばれた人で素人演技(ただし加山雄三みたいな端正な男の子です)なのですが、この作品にはそれがピッタリとあっていて、逆に良かったと思います。

脇を実力派で固めて、ドラマは何のてらいもない正攻法。明治の女性の、男性社会にがんじがらめになっている一生の描写に心が痛みます。

この作品で最も美しいシーンは、2人だけで綿摘みに行った時に、お互いを野菊とリンドウの花に例えながら、お互いの気持ちを確認しあうシーンだと思う。映画として十分に満足できる作品でした。

画像


斎藤政夫役の桑原正はその後芸能生活には入らず、作品はこれ1本だけです。ホント、加山雄三みたいな青年なので勿体ない。

映画のテーマソング ♪ 松田聖子 花一色~野菊のささやき~

https://www.youtube.com/watch?time_continue=2&v=JKtAXopFvoM


映画の純朴な美しさに心を掴まれ原作小説も遅ればせながら読んでみました。

「野菊の墓」
伊藤左千夫著 新潮文庫
☆☆☆★★★

画像


江戸川の矢切の渡し付近の静かな田園を舞台に、十五歳の政夫と二つ年上の従姉民子との間に芽ばえた幼い清純な恋は、世間体を気にする大人たちのために隔てられ、少年は町の中学に行き、少女は心ならずも他に嫁いで間もなく病死してしまう。江戸川の矢切の渡し付近の静かな田園を舞台に、純真、可憐な恋物語として多くの読者の共感をさそい続ける『野菊の墓』、その原形とも考えられる『守の家』、心理小説風な『浜菊』、他に『姪子』を収める。(文庫解説より)

原作は60ページ弱の短い小説です。映画はほぼ原作通りですが、ドラマを盛り上げるために、嫁ぎ先へ向かう民子を政夫が追いかけるシーンが加えられていたり、嫁ぎ先で武家出身とおぼしき厳しい姑のもとで苦労する民子のシーンが加えられていました。

本当は政夫が全寮制の学校へ向かったきり、家族からの妨害もあり、2人は二度と会えなかったんですよね。民子が死んでしまった事で、政夫の母親、民子の両親は、深く後悔をする・・っていうお話です。

この小さな物語が、現在に至るまで読み継がれているのは、老若男女を問わず、誰もが涙できる、とってもとっても素朴な若い2人の気持ちが詩情豊かに描かれているからなんでしょうね。

はっきりと言えば、相当ベタな話なのですが、そんな事を思わせない透明な美しさがあるんです。これは時代が明治というまだ個人の意思が尊重されなかった頃の悲しいお話だからと言う事もあるのでしょう。

この文庫には、他に3篇が収録されているのですが、その中の「浜菊」というちょっとシニカルな作品が、私はかなり気に入り2回ほどリピート読みしてしまいました。何だか、文章のリズムっていうか、友人と絶交に至るまでの心持の描写、話し言葉の面白さとか、現代の小説にはない魅力を感じました。

4篇全て読んでも100ページちょっとです。未読の方は是非。





松田聖子 ヒットコレクション 1 DQCL-5101
Sony Music Direct (Japan) Inc.
2012-09-01
松田聖子

amazon.co.jpで買う
Amazonアソシエイト by 松田聖子 ヒットコレクション 1 DQCL-5101 の詳しい情報を見る / ウェブリブログ商品ポータル


ブログ気持玉

クリックして気持ちを伝えよう!

ログインしてクリックすれば、自分のブログへのリンクが付きます。

→ログインへ

なるほど(納得、参考になった、ヘー)
驚いた
面白い
ナイス
ガッツ(がんばれ!)
かわいい

気持玉数 : 1

ナイス

この記事へのコメント

ノルウェーまだ~む
2018年05月27日 10:43
ごみつさん☆
聖子ちゃんの野菊の墓!
テレビでやっていたのですか?見逃しました…(涙)
実はあんなに有名なのに、私も未読・未見でした。
古い名作はやはり後世に残って行く、それだけの魅力がありますよね。
今度文庫チェックしてみたいです。
kinkacho
2018年05月27日 22:04
ごみつさん、こんにちは。
民さんは野菊の花のようだってやつですね。聖子ちゃん版は見てないです。
百恵ちゃんの映画はよく見たけど、聖子ちゃんの映画はみなかったなぁ~と歳がバレることを言ってしまいます。
ごみつ
2018年05月27日 23:29
ノルウェーまだ~む 様

こんばんは!
これ、ちょっと前にBSで放映されてて、録画しておいたものを見ました。
松田聖子の映画はどれも見た事なくて、聖子ちゃん映画を見るのもこれが初めてでした。

なかなか良かったですよ~。
他の映画がどうもアイドル映画っぽい恋愛ものばっかりなので、この作品に出ておいたのは彼女にとっても良かったんじゃないかな~って思いました。

原作はすごい短いお話でサクっと読み終わりますので、機会ありましたら是非。
ごみつ
2018年05月27日 23:34
Kinkacho さん

こんばんは~。
松田聖子が大ブレークしてたのって、私たちが高校生くらいの頃ですよね。百恵は小中学校の頃かな?1980年に結婚して引退しちゃいましたもんね~。
聖子ちゃんは歌は大好きでよく歌ってたけど、映画は今回初めてでした。

そうそう
「民さんは野菊の花のようだ。僕は野菊が大好きだ」っていうセリフでした。
そうすると民さんが「政夫さんはリンドウの花みたい。私、リンドウが大好き」って答えるシーンの、幼い恋のやりとりがとても心に残ります。
セレンディピティ
2018年05月29日 08:47
ごみつさん、おはようございます。
聖子ちゃんの野菊の墓、懐かしいです♪
といっても映画は見ていないのですが。
これが映画初主演だったのですね。
野菊とリンドウのやりとりは、テレビで見たことがあると思います。
聖子ちゃん、素朴な感じでかわいかったですよね。

原作も読んだはずですが、あまり覚えてない...ごみつさんが気に入られたという「浜菊」が気になります♪ 読んでみようかな。
ごみつ
2018年05月30日 01:38
セレンディピティ さん

こんばんは!
「野菊の墓」私も今回初めて見ました。
番組表を見て「懐かしい!」と思わず録画しました。当時は全然興味なかったのに、やっぱり歳なんでしょうか。(笑)

でも映画、なかなか良かったですよ。

「浜菊」は、昔の友人の自宅を訪ねたら邪険にされて腹立てて帰るだけのお話なんですが、会話が面白くて2回読んじゃいました。

この記事へのトラックバック