そして父になる

2013年/日本 (監)是枝裕和
(演)福山雅治 尾野真千子 真木よう子 リリー・フランキー 風吹ジュン 國村隼 樹木希林 夏八木勲
☆☆☆★★★

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ある日突然、6年間育てた息子が病院で取り違えられた他人の子どもだったと知らされた2組の夫婦が、過酷な決断を迫られ、それぞれに葛藤を繰り返す中で、家族の在り方を学んでいく姿を描く。第66回カンヌ国際映画祭 審査員賞受賞作。テレビ放映を録画鑑賞。

この2組は対照的な夫婦です。福山雅治は大手企業のサラリーマンで高層マンションに暮らす裕福な家庭。対して、リリー・フランキーは町の電気屋さんで、子供も3人いてそれほど裕福とは言えない家庭です。

福山雅治父は、幼い頃から子供に対して独立心を持つ様に教育してきた。お受験で私立の小学校に入学させ、ピアノも習わせている。息子は優しいが、おとなしく闘争心がないのが、福山父は不満だ。仕事は忙しく、あまり息子との時間も持てないが、息子に対する愛情は強く、息子の人生に万全のレールを引くために努力を惜しまない。

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リリー・フランキー父は、子供たちとは友達の様に接し、子供たちとの時間を大切にしている。賠償金の事ばかり気にかけているのは浅ましいのではなく、収入が多くない事で、子供にかかるお金を恐らくは心配しているからだ。少しでもお金が欲しい生活をしている事がわかる。

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そんな2つの家族の間で、自分たちの子供が取り違えられていたとしたら・・。

考えれば考えるほど、辛すぎて、一体どうしたら良いのか答えは見つかりませんよね。病院側では、こういう事故があった場合、ほとんどの家族は実の子供を引き取るという選択をしている・・と言ってたけど、6年も大切に育ててきて、それはないでしょう?って思う。

その6年は、夫婦にとって、そして子供にとっても、かけがえのない人生の中の珠玉の時間でしょう?

ラストで、この映画では答えは出ませんが、仮に育ててきた子供の方を選んだとして、その子供たちが成長してからどう説明するのか?とか、大きく人生が変わってしまった運命を、彼らがどう受け止めるのかとか、考えるだに答えの出ない問題ですよね。

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エンドクレジットで、この映画の参考文献として奥野修司氏の著作、「ねじれた絆-赤ちゃん取り違え事件の十七年」っていうのが出てましたが、昔、高度成長時代のベビーブームの時代には多発していたのですね。

ただこの映画は、その社会問題をテーマにしているワケではなく、家族っていう関係は一体どういうものなのかを描いた作品でしたよね。是枝監督の作品は、「海街ダイアリー」と「万引き家族」、そしてこの映画が3本目ですが、是枝監督にとっては、「家族」という関係こそが追い続けてるテーマなんだな~とあらためて思わされました。

↓子供たちの演技は自然で素晴らしかった。

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家族っていうのは、不幸を招く元凶になる事もあるし、よく考えると決して単純な関係ではありませんよね。血のつながり、法律上の関係、情や心の上での関係。様々なかたちがあるけれど、一つの家族が幸せである事っていうのは、またそれぞれのかたちがあるのだろうな・・と考えさせられました。

心に残る、非常に素晴らしい映画でした。お勧めです!

赤ちゃん取り違え事件の十七年 ねじれた絆 (文春文庫)
文藝春秋
奥野 修司

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この記事へのコメント

セレンディピティ
2019年04月23日 08:30
ごみつさん、こんにちは。
私は本作、TV放映された時に見ましたが、正解のない、でも考えさせられる作品でしたね。
私は、親にとっても子にとっても、この6年をなかったことにはできない...と思いました。でもどちらを選んだとしても、この先成長していく中で、もしもあの時...だったらと考えてしまうことはきっとでてくるでしょうね。
福山パパの成長物語でもありましたね。

https://blog.goo.ne.jp/serendpt3/e/9d9c906250f4f79b08a7dbe9f0b896a6
ごみつ
2019年04月24日 02:31
セレンディピティ さん

こんばんは。
私もかなり前にテレビ放映されたのもを録画して、やっと鑑賞しましたが、素晴らしい映画でしたね。

実際にこんな事が起きたら、映画よりも、もっともっと大変な事になるのでしょうが、この映画は、この設定をかりて、家族とは何かっていうのを問いかける作品になってましたよね。

映画のラストじゃないけれど、これはどうやって答えを出して行けば良いのか、簡単な事ではないですよね~。

そうそう、福山パパは、自分の両親が離婚して、母親と離れる事になってしまった心の傷があり、新しい母親を決して認めようとはしてこなかった。
その事が、自分の子供を育てる上でも影響を与えていて、福山パパの心の在り方の変化が、この作品の大きな中心になってましたね。

本当に色々と考えさせられる作品でした。(´-ω-`)
ここなつ
2019年04月24日 12:53
こんにちは。
私は「生みの親より育ての親」派なので、6年間育ててきた息子に対する愛情、またその息子が受けてきた愛情というものは、血よりも濃いのではないかと思いますが、それでも、実の子のことも出会ってしまえば愛さずにはいられないだろうということも想像に難くありません。
親になることよりも親であり続けることの方が難しいのかもしれませんね。
ごみつ
2019年04月24日 16:43
ここなつ 様

「生みの親より育ての親」っていうのは、その昔は日常にありましたよね。
私の祖母は、私の父親をふくめて5人産んで早くに亡くなり、後妻にきた人が私の知ってるおばあちゃんです。
父は次男で、四男、五男は子供のいなかった祖父の弟に養子に出されました。

でも家族全員、血のつながらない祖母をホントの母親、祖母って思ってたし、兄弟5人も最後までつながってましたよ。

この映画の場合は、不慮の事故みたいな、突然の出来事なので、状況はまったく異なるけど、一緒に生活してきた時間っていうのは何物にもかえがたいですよね。

心を動かされながらも、ちょっと辛い作品でした。
ノルウェーまだ~む
2019年04月24日 18:16
ごみつさん☆
切ない映画でしたねぇ。
本当の親子であっても繋がれない、最近よく目にする我が子を虐待したりするような関係だと、血のつながりって何だろう?と考え込んでしまいます。
そう言う意味では育ての親でも「信頼し合えて絆があれば」きちんと親子なのだと思います。
「愛情」と言う点では『万引き家族』の時もそうでしたけど全く愛がないわけではないし、愛情の表現の仕方が人によって違ったり、親と子で求める愛情が違ったりで、その辺も善し悪しを決められるものでは無いところが難しいんですよね…

この答えの無さを是枝監督は実にうまくラストで表してました。
ごみつ
2019年04月24日 23:14
ノルウェーまだ~む 様

こんばんは!
コメント、有難うございます。

ホントに、切なくて苦しい映画でしたが、作品自体は、とてもサラリと描かれていたのも印象的でした。

実際の世界では、まだ~むさんがおっしゃてる様に、子供の虐待やネグレクトが後をたちませんよね。
それこそ、血のつながりよりも、人と人としての関係の絆が一番大事なのでしょうね。

親の存在って、良しにつけ悪しきにつけ、子供の大きな影響を与えますよね。
はたから見ると、とってもひどい親に見えても、当の子供にとっては、とっても大切な存在だったりする事もある。

親子の関係っていうのは、本当に深~い縁なんだな~って思いますよね。
ラストシーン、一見、育ての子供をひきとるのかな?って思わせるけど、事はそう簡単ではない。
そんな余韻を残すラストシーン、見事でしたね。
だぶるえんだー
2019年04月27日 11:02
  アメリカ製の推理小説で、主人公が濡れ衣で死刑宣告食らった女性を救出する話がありました。すったもんだの挙句主人公はその女性の無実を証明するのですが、刑務所から生きて出られると知って、その女性は一人娘を手放す決意をしてしまうのです。娘さん、養母のもとで幸せに育っているので。あたしみたいな親はいないほうがあのこのためよ・・・・・・・

  そこまで思いやるのが本当の愛情なのでしょう。もうひとつ。その小説の中で、一人の受刑者が主人公に貴重な情報を与えてくれるのです。その受刑者は死刑宣告食った女性に同情していて、何とか助けてやれないかと手を差し伸べる。それはいいのですが、その受刑者も濡れ衣で服役しているのです。実母に濡れ衣着せられて・・・・・・・・

  作者さん、いろいろ思うところがあったのでしょう。
ごみつ
2019年04月27日 22:16
だぶるえんだー 様

こんばんは。

そんな内容の小説があるのですね。

家族の関係っていうのは、人間の基本となるベーシックな関係だけれど、その家族ごとに、様々な複雑な事情や、個々の関係性なんかもあるし、小説の大きなテーマにもなりますよね。

子供にとって(親にとっても)、何が幸せなのかは、それぞれの心の中にあって、答えの出せる問題ではないのが、重たいですね。
だぶるえんだー
2019年04月28日 09:19
  いつもお返事ありがとう。気が向いたら
「満月の泥枕」
も読んでみてください。私は一時これのために(ただこれだけのため)毎日新聞にへばりついていました。休載の日は地団駄。あと、前に紹介した
「Lily  lily  Rose」
無事に第二巻が出ました。みなさまの御支援を賜り~♪

  私自身は妻子を持った経験がありません。この歳ですので今後持つこともないでしょう。それで余計に興味をひかれるのでしょう。家族の物語に。
ごみつ
2019年04月28日 22:38
だぶるえんだー 様

こんばんは。
こちらこそコメント、有難うございます。

「満月の泥枕」、面白そうですね!是非、近いうちに読んでみます。
"Lily lily rose"もご紹介いただいたの覚えていますよ。機会があったら読んでみますね。

家族は、妻子だけではなく、親との関係、兄弟との関係、そんなのもありますからね。
何らかの理由で天涯孤独であっても、必ず誰かから生まれていて、二親は必ず存在していた。
家族っていうテーマは、広く、深く、描けますよね。

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