エベレスト

1996年に起きた、エベレスト大量遭難事故をご存知でしょうか?日本人の難波康子さんをふくむ12人の死者を出した遭難事故について初めて知り、映画、そして本を1冊読みました。

アマゾンプライムに、ナショナルジオグラフィックチャンネルのドキュメンタリー「衝撃の瞬間」(原題 Seconds From Disaster)という番組があり、その中から日本航空123便墜落事故(御巣鷹山)、福知山線脱線事故、そしてこのエベレスト大量遭難事故の3つを見ました。それで、はじめてこの大量遭難事故を知ったのですが、生存者の中に著名な登山家で作家でもあるジョン・クラカワーがいた事を知り、とても興味がわいたので、まずは映画を見てみました。

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「エベレスト 3D」
Everest
2015年/アメリカ (監)バルタザール・コルマウクル
(演)ジェイソン・クラーク ジョシュ・ブローリン ジョン・ホークス ロビン・ライト マイケル・ケリー サム・ワーシントン キーラ・ナイトレー エミリー・ワトソン エリザベス・デビッキ ジェイク・ギレンホール 森尚子
☆☆☆★★

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まずは、この事故が起きた背景についてちょこっと書いておきます。

エベレストは1953年にニュージーランドのエドモンド・ヒラリーとシェルパのテンジン・ノルゲイにより初登頂。それまでは一部の冒険家や国家プロジェクトによるものであったが、登頂のための攻略が一巡すると、経験を積んだガイドが一般登山家を山頂まで案内する商業化がすすんでいく。

1990年代の半ばには、公募隊による登山が主流となり、アマチュア登山家であっても必要な費用を負担すればエベレスト登山に参加できる様になっていた。

シェルパやガイドがあらかじめ、ルート工作をし、荷物をあげておいてくれるため、登攀技術や経験を持たないまま入山する登山者が増え、ルートが狭い場所では渋滞をおこし、長時間待たねばならない状況が起きていたのです。

以上が事故の背景にありました。


1996年、ニュージーランドのロブ・ホールが率いるアドベンチャー・コンサルタンツ社の総勢12名、そしてアメリカのスコット・フッシャーが率いるマウンテン・マッドネス社の総勢13名が、天候が理想的であった同じ日に登頂する事になる。

アドベンチャー・コンサルタント社のロブ・ホールを演じるのはジェイソン・クラーク

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しかし主力シェルパの体調不良で十分な事前準備がされず、登山者は経験がなく未熟なため、他のガイドやシェルパに多大な労力がかかってきてしまう。マウンテン・マッドネス隊ではガイドの一人が自分だけ登頂し下山。リーダーのスコット・フィッシャーは疲労困憊しきってしまう。

それに加え、同じ日に登らないと約束をしていたにも関わらず、台湾隊、南アフリカ隊も登攀を決行してしまい、登頂ルートは大混雑と混乱を起こしてしまう。

どれほど遅くても14時には下山を開始しなければならないにも関わらず、両社のリーダーが2人ともその時間を大幅に遅れ、スコット・フィッシャーに至っては登頂したのが16時30分だった。

マウンテン・マッドネス社のスコット・フィッシャーを演じるのはジェイク・ギレンホール

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そんな中、突然天候が悪化し、まだ下山しきっていなかったメンバー11名をブリザードが襲う。日も暮れきっていて、ロケーションが確認出来ない中ビバークするが、深夜に一瞬晴れた時に位置を確認し、体を動かせた者は第4キャンプまで下山。意識を失っていた5名の救助を求めるが、救助に行く体力が残っていたのは、先に勝手に下山してしまっていたマウンテン・マッドネス隊のアナトーリだけだった。彼は何とか3名を助け力つきる。

残されてしまった者は全員が死亡したが、奇跡的にベック・ウエザースが自力でキャンプに戻ってくる。彼は指10本、鼻、かかとを凍傷で失うが生還し、この事故の記録の本を執筆しています。

この遭難事故では、ロブ・ホール、スコット・フィッシャーともに亡くなっています。

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この映画は、これらがドキュメンタリータッチに、ところどころドラマを盛り上げながら描かれています。映画には姿は見せていませんが、この時にはIMAX隊も参加していて、「エベレスト」というドキュメンタリー映画を撮影しています。こっちも見たいのですが、DVDが出てないみたいなんですよね。いつか必ず観たい。

まずまず、面白かったのですが、もっときちんと全貌が知りたくて、生存者の一人ジョン・クラカワーの著作も読みました。

「空へ―エヴェレストの悲劇はなぜ起きたか」
ジョン・クラカワー著 文春文庫
☆☆☆★★★

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1996年5月、日本人の難波康子さんをふくむ12人の死者を出す遭難事故が、エヴェレストで発生した。雑誌のレポーターとしていわゆる「ガイド登山隊」の実態をルポするためこの登山隊に参加、たまたま事故の当事者となり奇跡的生還を果たした著者が、徹底取材をして著した遭難記録とエヴェレスト登山の最新事情。世界的ベストセラー。(文庫解説より)

大体の事故の顛末は映画通りなのですが、雑誌の記事のために、アドベンチャー・コンサルタンツのメンバーとして参加していたクラカワーのこの著作は、ネパールに到着して、体を低酸素にならしながら、徐々にキャンプをあがっていく過程からはじまり、メンバーとのあれこれ、体力的にいかにきつかったか等、凄い臨場感で語られていくので、読むのをやめるのが大変なくらいでした。

クラカワー自身は、そもそも登山のプロでもあるので、登頂も成功させ、早めにキャンプに戻っていましたが、体調を大きく崩し、救助に参加できる状態ではなかった。この頃酸素ボンベもつきてしまっていたのです。8000メートルを超えるとそこは人間にとって別世界となり(デスゾーンと呼ぶそうです)、登山技術がある云々より、もう体力、精神力の勝負になるんですね。

この日の事故で、生死をわけたものは何だったのか・・そしてどうしてこんなにも大量遭難者を出してしまったのか、そんな事が事故後の取材とともに記録されていて、興味のある方は必読です。

マウンテン・マッドネス隊のメンバー
前列一番右の女性が難波康子さん、右から3番目がロブ・ホール、右から5番目がジョン・クラカワー 後列右から3番目がベック・ウエザースで映画ではジョシュ・ブローリンが演じてました。

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エヴェレストより高い山 登山をめぐる12の話 (朝日文庫)
朝日新聞出版
ジョン・クラカワー

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この記事へのコメント

セレンディピティ
2019年04月10日 23:14
こちらにも...。
前にちょこっとお話しましたが「エベレスト3D」はDVDで見ました。ちょっと八甲田山も思い出したりもしましたが、悪天候が予想される中、途中で引き返すことの勇気というものを考えさせられました。
彼らはスポンサーがいるわけでなく、個人のお金で何百万円も出していて、しかもこれが人生最後のチャンスのつもりで登りに来ているから、なおさらですよね。
クラカワー氏の本もおもしろそうですね。
ごみつ
2019年04月11日 00:36
セレンディピティ さん

こちらにもコメント有難うございます。

悪天候はけっこう突然やってきたんですよね。天候が穏やかなら、遅い時間になってもきっと戻ってこれたんだろうと思います。
このネパール側からの登攀メンバーだけでなく、当日はチベット側からの登攀メンバーも亡くなっていて、全部でかなりの人数が亡くなってしまったんですよね。

そうそう、参加費はめちゃくちゃ高額なので、何とか登頂させようと無理をしたのも大惨事の要因になってしまったみたいですね。

クラカワーの本、凄い面白いですよ!記事のために、けっこうイヤイヤながら登ってて、本当に辛そうでした。
kinkacho
2019年04月12日 08:09
ごみつさん、こんにちは。
この遭難事故はもちろん知ってます。映画も見たし、本も読みました。
エベレストのノーマルルートはお金さえ出せばチャレンジはできるのですよね。
公募登山隊と言いながら、実態はガイド登山。ガイドは登らせてなんぼですからね。どうしても無理をする。それはガイド登山につきまとう危険です。エベレスト以外でも同じです。
高所登山に行く時は、それはもうトレーニングして、高度順応も可能な限りして、渡航するのですが、本番での高度順応が上手く行くか、天候に恵まれるのは運ですからねぇ~
ごみつ
2019年04月12日 21:06
kinkacho さん

こんばんは!
先日、お会いした時もちょこっと話しましたよね。
この事件、個人的に衝撃度が高くて、しばらくエベレストの事ばっかり考えてたので、もうちょっと色々お話を伺いたかったな~。
晏子の桃の話とかは、別の時で良かったナ。(笑)

エベレストでこんな風に商業登山が盛んになってるのも初めて知りましたし、こんなに危ないところで何であんなにみんないい加減なんだろう・・と思ったりしましたが、あの高度では物を考えるのも難しくなるんですね。

私は最も高いところに登ったのは高尾山なので(;^ω^)、ちょっと想像も出来ないのですが、本当に長い時間をかけて体を順応させていかないとならないんですね。

天候は運だから仕方ないけど、怖いですね。

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