心に残った本 初夏の3冊

最近、読んだ本の中から心に残った3冊の感想をまとめて記事にしてみました。今回の3冊は偶然ですが、すべてご紹介いただいたものです。


「雪の中の軍曹」
il sergente nella neve
マリオ・リゴーニ・ステルン著 大久保昭男 訳
草思社
☆☆☆★★★

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イタリアの著名な作家が、ロシア戦線に軍曹として従軍した体験を、さながら散文詩のような見事な文体で綴る。第2次大戦の真実の姿を描いた、記録文学の名作。(Bookデータベースより)

いつもコメントをいただいている、だぶるえんだー様からの紹介で読んでみた1冊。第二次世界大戦。イタリアはドイツの同盟国として、ロシア戦線に参戦。

この本は、著者が東部戦線に従軍した時の経験を記録した作品でドキュメンタリーなのですが、ロシアからの敗走の過酷な描写とあわせて、著者の人間性を感じる事の出来る作品で、記録文学の傑作だと思いました。

最も印象に残ったのは、イタリア軍の何とも言えない自由さ。アメリカ軍とも違って、とにかく上官と兵卒の距離が物凄く近い。同じ軍隊でも、国が違うとこんなにも違うのかと思わされました。仲間のドイツ軍兵士の姿、敵国のロシア兵の姿、彼等の描写も自国の兵の姿と等しく、同じ目線で描かれていて、これが一つの臨場感になってるんですよね。

もう一つ感心したのは、ただひたすら退却を続ける敵国兵達を、途中にある村の人たちが、真摯に助けてくれるんですよね。これは映画「ひまわり」も同じ状況下で起こった出来事ですよね。きっとこういう田舎の純朴な農民達が、満州でも日本人の子供をひきとってくれたりしたんだろうな・・と思ったりしました。

イタリアの第二次大戦軍記もので、邦訳されているものは少ないと思うので貴重な1冊。すでに絶版ですが、興味のある方は図書館を探されてみて下さい。中古はわりと高額です。


「ウルフェン」
The Wolfen
ホイットリー・ストリーバー著 山田順子 訳
早川書房
☆☆☆★★★

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ニューヨークの下町ブルックリンで2人の警官の惨殺死体が発見された。拳銃を抜く間もなく息絶えた2人の喉は鋭い牙で引き裂かれ、そのまわりには無数の獣の肢跡が。だが、その肢跡は犬のものでも、狼のものでもなかった。犯人捜査にあたったニューヨーク市警の古参刑事ジョージ・ウイルソンと女性パートナーのベッキィ・ネフはやがて恐るべき真実をつきとめた…。大都市ニューヨークを舞台に、斬新なアイディアで描き出す、かつてない恐怖とサスペンスの世界!(Bookデータベースより)

ヌマンタさんの記事を読んで、がぜん読みたくなって図書館で借りてきました。こちらも単行本、文庫ともに絶版です。

これは物凄く面白かったです!徹夜したりして一気に読んじゃいました。ホラーとして秀逸な1冊。ウルフェン達の正体や、容貌なんかは、本を読みながら知っていただきたいので、ここでは明かしませんが、従来の狼男ものとは一線を画している事だけはご紹介しておきたいです。

イヌ科のきゅう覚の凄さも体感できますよ!

「ウルフェン」は1981年に映画化されているのですが、DVDも廃盤で今はちょっと見る術がありませんでした。ウルフェンの姿をどう映像化してるのか興味津々!映画、見たいな~~!

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「ヌヌ 完璧なベビーシッター」
Chanson Douce
レイラ・スリマニ著 松本百合子 訳
集英社文庫
☆☆☆★★★

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パリ十区のこぢんまりしたアパルトマンで悲劇が起きた。子守りと家事を任された“ヌヌ”であるルイーズが、若き夫婦、ミリアムとポールの幼い長女と長男を殺したのだ。そしてルイーズも後を追うように自殺を図り―。子どもたちになつかれ、料理も掃除も手を抜かない完璧なヌヌに見えたルイーズがなぜ?事件の奥底に潜んでいたものとは!? 2016年フランスのゴンクール賞を受賞した話題作。

こちらはLingmuさんから「面白いから」といただいた1冊。ヌヌとは乳母を意味する言葉nourriceの幼児言葉なんだそうです。

いやいや、これがまた物凄く怖かった・・。実際の事件をベースにして書かれた作品との事ですが、移民を受け入れてからのフランスの歪んだ国内の状況が、本当に良くわかる作品でした。

著者のレイラ・スリマニ氏自身も、フランス人とアルジェリア人とのハーフでモロッコ生まれ。彼女自身も微妙な差別を感じながら生きてこられたのではないでしょうか?

これが完全な移民となると、ヌヌ=ルイーズみたいな境遇に陥っている人は大勢いるのではないか・・と恐ろしくなります。

人から差別の感情を拭い去るのは至難の業(不可能かもしれません)だし、異文化同士が理解しあう事の難しさ(これも不可能かもしれません)も感じる1冊でした。

心理ホラーとしても秀逸です。260ページほどの文庫ですので、興味のある方は是非。

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この記事へのコメント

セレンディピティ
2019年06月30日 10:19
ごみつさん、こんにちは。
3冊ともおもしろそう!是非読んでみたいです。
1冊目、たしかに米軍・独軍・英軍は映画などにもなっていますがイタリア軍を描いた作品はあまりない(というか日本に入ってこない?)ですね。興味深いです。
2冊目、ウルフェンの正体が気になります!狼と犬を遺伝子操作した動物とか?(あ、答えなくてよいですよ^^)
3冊目は聞いたことがあります。やはりおもしろそう。こちらも読んでみたいです。

ところで「冷血」下巻はもうすぐ読み終わりますが、こちらも堪能しました。ご紹介ありがとうございました。
映画はしばらく見れなさそうですが、本は通学の時間を利用してちょこちょこ読んでいます。いずれまとめて記事にできるといいのですが...。
ごみつ
2019年06月30日 14:43
セレンディピティ さん

こんにちは。
セレンさんには、この中では「ヌヌ」がお勧めかな。フランスの育児状況なんかも、日本とまったく同じなんだな~とわかってビックリしました。
やっぱり育児ノイローゼになったりするものなんですね。

「ウルフェン」は凄い面白いので一気に読めます。読みながら、これは映像作品向きだな!って思いました。
字幕なしならYoutubeに一つあがってたのですが、画質がかなり悪いしあきらめました。

「雪の中の軍曹」も良かったですよ。連合国と、ドイツのものはけっこう邦訳されてると思うのですが、イタリアのは恐らくあんまりないと思うんですよね。もちろん本国ではたくさん出ているのでしょうけれど。

「冷血」、下巻はガラリと作品の雰囲気が変わりますよね。私にとっても読み応えのある作品でした。

映画は私もこのところなかなか時間がとれずにいます。家ではボチボチと見てるんですけどね~。(;´∀`)
しばらくは、頑張って下さいね!
ヌマンタ
2019年07月02日 12:26
ストリーパーは割と寡作な作家です。映画ハンガーの原作の「薔薇の渇き」も、ウルフェンと似た感じはありますね。最近だと「デイ・アフター・トモロー」の原作を書いていたりしています。

一時期、あっちの世界(私は宇宙人に遇った!)へ行ってしまったので心配していましたが、酔いが醒めたみたいです。またホラーを書いて欲しいですね。
ごみつ
2019年07月03日 00:53
ヌマンタ さん

こんばんは。
「ウルフェン」凄い、面白かったです!
もっとこういう作品、読みたいな~。

ストリーバーは「デイ・アフター・トゥモロー」の原作者でもあったんですね。
「薔薇の渇き」も読んでみようかな。こっちも映画「ハンガー」は未見です・・。
ご紹介、有難う~。楽しみが増えました。!(^^)!
lingmu
2019年07月07日 22:41
ごみつ様

「ヌヌ」お読みになったのですね。たしか冒頭から、ベビーシッターが子どもを殺したとあるので、読み進めるのが怖かったです。

このルイーズは移民ではなく、フランス人だったと思います。
労働者階級の貧しい女性ですが、貧困であること以上に、その孤独な身の上に胸が痛くなりました。

たまたま雇われた、豊かで幸せそうな家庭に同化したくなる心情が、よく分かります。

雇い主夫婦は、ルイーズを対等な友人として扱っているつもりで、実際にそう努めているのですが、でも、最後までそういうわけにはいかない。

フランス映画を見ると、階級差みたいなものを感じることがありますが、この小説でもそうでした。この悲劇の原因の一端は、そういった階級差による疎外とか分断から来ているように描かれていると思いました。

ごみつ
2019年07月07日 23:04
Lingmu 様

こちらにもコメント有難うございます。

ルイーズはフランス人なんでしたっけ?金髪なのはわかってたのですが、他のヌヌがみんな移民だったので、てっきり彼女も移民なのかと思ってましたが、確かに思い起こすと貧困層のフランス人だったのですね。

しょっぱなが、子供たちの殺害シーンからなので、読み進めるのがホントに怖い作品でした。
完璧に見えたヌヌの心の闇が、少しづつあかされてきて、雇い主が「これはマズイ」と気づいた時にはもう遅かった・・。

移民である事や、収入の格差からくる、差別や分断みたいなものは、どこでもあるのでしょうし、ルイーズ自身、精神の病を抱えてましたよね。
心理サスペンスとして秀逸でした。

ご紹介いただいて有難うございました~。!(^^)!

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