アンドレイ・ルブリョフ

Андрей Рублёв
1969年/ソ連 (監)アンドレイ・タルコフスキー
(演)アナトリー・ソローツィン イワン・ラピコフ ニコライ・グリンコ ニコライ・ブルリャーエフ ロラン・ブイコフ
☆☆☆☆

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タルコフスキーの映画が何か見たいな~と思って、内容も知らずにDVDレンタル。これを見たのは1月末なのですが、かなりの衝撃を受けてしまいなかなか記事に出来ずにいました。

15世紀初頭のモスクワ大公国。タタール襲来とルーシ諸侯の内乱が続いた動乱期を舞台に、ロシアで最も偉大なイコン画家と言われるアンドレイ・ルブリョフを描いた歴史劇です。

映画は第一部、第二部、あわせて10のパートにわかれていて、上映時間は3時間25分。

ロシアの暗黒の時代を描いた大河ドラマでもあり、その時代を生きたアンドレイ・ルブリョフの苦悩と、芸術家としての人生の模索を描いた、非常に素晴らしい映画でした。タルコフスキー映画としてもかなりわかりやすい映画でもあります。

長くなるのでストーリーは省きますが、不思議なプロローグの後、ルブリョフと画家仲間たちが新天地を求めてモスクワへ向かうシーンから始まります。そこから若いルブリョフが経験する様々なエピソードが続き、第二部でタタール(モンゴル軍)が襲来します。

タタールはこれはもう本当~~に野蛮で残酷で、次々と町や村を焼き払い、人々を惨殺していきます。タタールによる支配(タタールのくびき)は200年も続いたんですね。良かったよ~、日本は神風吹いて。

その騒動の中で、ルブリョフは若い女性を守ろうとして一人の兵士を殺害してしまう。罪を償うために、彼は絵筆を折り、終生沈黙する事を誓う。

そして10年後。 鋳物師の息子ボリースカが、大公から鐘づくりを命じられる。熟練の鋳物師だった父親は物故しており、ボリースカは技術を習得していなかった。しかしボリースカは執念で鐘を完成させる。

それを見ていたルブリョフは倒れ伏して号泣するボリースカを抱き起し、「お前は鐘をつくり、私はイコンを描く」と声を発し、再び絵筆をとる事を決意するのだった。

映画はモノクロなのですが、エピローグではカラーになり、ルブリョフの現存する作品が紹介されていきます。

タルコフスキー的な映像表現も素晴らしかったのですが、私はこの当時のロシアの歴史背景、そして「イコン」って何なの?という事にとても興味を惹かれました。

何も知らないまま、この傑作映画の記事は作れないと思い、本を2冊読みました。

「ロシア正教のイコン」
オルガ メドヴェドコヴァ (著), 黒川 知文 (監修), 遠藤 ゆかり (翻訳)
創元社 「知の再発見双書」
☆☆☆★★★

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これはイコンの歴史と概要を、時代を追いながら図解で解説した本。イコンっていうのは、正教会、東方教会の信者にとってただの宗教画ではないんですよね。これは神そのものなのです。偶像崇拝でもあるので、今まで何度も迫害(イコノクラスム)にあい多くの作品が消失しているそうですが、現代でも新しい画風でイコンは製作され続けているそうなんですよね。

こういう本も出てるみたいですが、入手は難しそう。

"Russian Church Art Today"

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「タルコフスキーとルブリョフ」
落合 東朗 (著) 論創社
☆☆☆★★

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2人のアンドレイ。映画監督アンドレイ・タルコフスキーと中世ロシアの偉大なるイコン画家アンドレイ・ルブリョフ。この2人の芸術家の歩みを比較しながら、彼等の軌跡を辿っていく内容でした。この本はどちらかと言うと、タルコフスキーの映画製作の手法や情熱がテーマになっていました。

2冊を読み終えた頃、ロシアイコンにちょっとのめりこむ様になってしまい、画集を探したのですが、今、手に入る本は日本にはないんですよね。近所の図書館にも蔵書がなく、仕方なく英語の画集を1冊購入しました。

"Icons"
by Eva Hasutein-Bartsch Taschen Pub

右がルブリョフの最も有名な作品「至聖三者」です。

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テキストが英語なので読んでないのですが、簡易な画集として素晴らしいです。買って良かった。

長くなるのでこのへんで。イコン研究はちょっとづつこれからも続けていきたい。それとロシアの歴史ももっと知りたいな!色々な意味で、本当に見て良かった映画です。

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アンドレイ・ルブリョフ『 至聖三者 』のマグカップ:フォトマグ(世界の名画シリーズ)
アンドレイ・ルブリョフ『 至聖三者 』のマグカップ:フォトマグ(世界の名画シリーズ)





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この記事へのコメント

kinkacho
2020年05月09日 23:15
ごみつさん、こんにちは。
ロシア正教のイコンとはマニアックなお話です。
イコン=アイコンなので現代と通じるものがありますね。
ロシア正教は布教にイコンが重要だったのですが、偶像崇拝との兼ね合いでイコン禁止令が出たり撤回したりいろいろ大変だったらしいですよ。
タタールの残酷さはよく話題になりますが、おそロシアに比べたらまだまだ...
ごみつ
2020年05月10日 00:55
Kinkacho さん

こんばんは。
タルコフスキーの映画ならどれでもいいや、とこれを借りたのですが、てっきり現代劇だと思ってたので(調べなさすぎ( ̄▽ ̄;))みはじめてビックリしました。

でも、この映画、素晴らしかった。白黒だし、長いし、表現方法がアーチスティックなので、なかなかお勧めしずらい映画ですが、私は堪能しました。

イコンって、何度も迫害にあってるんですね。ソ連になった時もたくさん破壊されたみたいです。

タタール(韃靼)は、よくこんな遠くの寒いところまで進軍してくるな~!とビックリしますが、内乱があってロシア内部での手引きもあったんですよね。

色々と勉強になりました~。
2020年05月10日 12:58
ごみつさん☆
3時間半ですか・・・
モノクロでこの長さは少々キツイですねぇ(笑
イコンと言えば宗教画だけに、どこか惹かれるものがあって凄く見入ってしまいますよね。
随分前ですが新宿の高層ビルの上の方でカルチャーセンターの作品展のようなの中にイコン画が並んでいて、自分で描くの有りなんだ!?とびっくりした記憶があります。
そう言えば教会の宗教画を好きなように修復しちゃったおばさんがいましたよね(爆)
2020年05月10日 14:01
ごみつさん、こんにちは。
ロシア正教と聞いて思い出すのは
ディア・ハンターの序盤にある
ストリープとウォーケンのウェディングの場面です。
映画を見た時、プロテスタントの結婚式とまるで様子が違うので
もの珍しく、衝撃を受けたのでした。

それから正教会といえば、御茶ノ水にあるニコライ堂も
印象深く覚えています。
イコンとの関係も興味深いですね。
ごみつ
2020年05月10日 18:32
ノルウェーまだ~む 様

こんばんは。

この映画、ちょっとお勧めはしずらいかな~。でも、アンドレイ・ルブリョフの生涯なんかがとても興味深かったです。

戦乱の時代の宗教心の在り方みたいなものとか、あと、イコンっていう作品の持つ意味とか、個人的に思うところのたくさんある映画でした。

そうそう、イコンって今でも、若手アーチストとかが描いてるみたいで、前衛的な作品もありました。
それを自分の宗教心の拠り所とするワケだから、自分自身が納得できればアリなんでしょうかね。

けっこう前ですが、あのスペインの修復画は、申し訳けなかったんだけど、大爆笑しちゃいましたよね。( ;∀;)
ごみつ
2020年05月10日 18:38
セレンディピティ さん

こんばんは。

「ディア・ハンター」の結婚式って、ロシア正教だったんでしたっけ?
すっかり忘れてたので、また見直したくなりました。

私も、まるで正教会やイコンについての知識がなかったので、今回、この映画で色々と知る事が出来て良かったです。

キリスト教の歴史もひもといてみると面白いですね。このあたり、全く知らない事だらけです。

前にも書いたかもですが、ニコライ堂は英会話に通ってたので、懐かしいです。(*'ω'*)
2020年05月24日 22:40
ごみつさん、お久しぶりです。お仕事いかがですか?明日25日に東京の緊急事態宣言が解除される見込みでようやくひと心地つくでしょうか。まだまだ気を引き締めていくことになると思いますが…

「アンドレイ・ルブリョフ」私は学生時代に白山にあった今はなき三百人劇場のソ連映画祭で観ました。こと映画に限っては、ロシアよりソ連時代の方が充実してたような。政府が採算度外視で資金出してたのでしょう。

確かに「ルブリョフ」はタルコフスキーにしては難解な方ではありませんね。時間的には長かったけれど、私にはその長さが快く、白黒の画面の中で木の葉がそよいでいたのすら心地よかったことを未だに覚えています。
ただストーリーはほとんど忘れてました。ごみつさんが紹介されているのを見て、また見たいなあと思いました。

ロシアのイコンについては私も詳しくはないのですが、イタリア絵画でもルネサンス初期までは聖母子像には、イコンに近い印象です。
辻邦生さんがソ連末期にソ連旅行した際のエッセイに、政府に宗教や伝統を迫害されてきたにも関わらず、ロシア的な文化が生き続けていることに感動したという一節がありました。「ルブリョフ」という映画がまさにその証ですね。

ソ連映画祭で見たソ連製の美術映画で「ルブリョフ」に勝るとも劣らない感動だったのは、現在だとジョージアに実在した素朴派の画家ニコ・ピロスマニの物語「ピロスマニ」。こうやって振り返るとソ連は良質な美術映画残してくれましたね。

真面目に書いて最後に変な記憶をひとつ。ルブリョフにモンゴル族の大将が出てきたと思うのですが、森田公一とトップギャランの森田さんにクリソツだったという記憶が…
ごみつ
2020年05月25日 00:23
夏 さん

こんばんは!お元気ですか?先日はメールも有難うございました。

いよいよ25日に解除決定みたいですね。嬉しい反面、ちょっと不安もありますよね。しばらくは気を付けたいですね。
うちの職場は、緊急事態後も店をずっとオープンしてましたが、アルバイトさんは全員自宅待機になったので、しばらくは大変でした。今は全員戻ってきています。

ところで、夏さん「ルブリョフ」、劇場でご覧になったんですね!かなり長いので、大変だったでしょう。
でも、これ物語はまったく難しくないし、雰囲気がとても良いので、長丁場でも楽しめますよね。

タルコフスキーのソ連時代の作品は、本当に素晴らしいです。アメリカ映画の影響がないのもあって、とても独特なタッチだし、けっこう素朴ですよね。ピロスマニの映画、私も見てみたいな~。

モンゴルの将軍出てました!でも森田公一に似てましたっけ?(笑)いつかチェックしてみます。今、思わず「青春時代」を口ずさんでしまいました。(笑)