異端の鳥 (書籍)
The Painted Bird
イエールジ・コジンスキー(著) 青木日出夫(訳) 角川書店
☆☆☆★★★

第二次大戦下、親元から疎開させられた6歳の男の子が、東欧の僻地をさまよう。ユダヤ人あるいはジプシーと見なされた少年が、その身で受け、またその目で見た、苛酷な暴力、非情な虐待、グロテスクな性的倒錯の数々―。(BOOKデータベースより)
きたる10月に全国ロードショー予定のチェコとウクライナの合作映画の原作を読みました。ツイッターでこの映画の情報とポスターを見て、興味が湧いて読んでみたのですが、これはきついです。残酷な描写の苦手な方は具合が悪くなると思いますのでご注意下さい。
そういう私もとある描写で電車の中で貧血になりそうになりました。

http://www.transformer.co.jp/m/itannotori/
ただ誤解をして欲しくないのは、これが戦時下で過酷な目にあった少年の非情な出来事をドキュメンタリー的に描いたりとか、反戦的な意図をテーマとして描いた作品ではないという事です。
これほどの過酷な描写が次々と起こる物語を読み続けていられたのは、この小説が基本的にとてもファンタジックだからでした。主人公の少年は決して生きる事をあきらめない不屈の精神の持ち主であるのも、めげずに読ませる理由でした。
この少年は、自らが生き地獄の様な目にあいながら、その現状を常に客観的な視線で見つめているのです。これはこの小説のスタイルであると同時に、以前読んだ「夜と霧」のフランクルの姿にも重なって見えました。
人はあまりにも過酷な状況に陥ると、精神が分離し、もう一人の自分が苦しんでいる自分を客観的に眺める様になるのだという心理学的考察がされていたからです。
このひたすら続いていく人間の暴力性の中に見えてくるのは、本来、人間が持っている残虐性、どこまでも根強い民族差別の歴史的な連鎖です。これ、一体、いつまで続くんでしょうね?人間が滅亡するその日まで終わらないんでしょうか。
作者のイエールジ・コジンスキーは、ポーランド系ユダヤ人だったため、両親は彼を田舎へ疎開させ、カトリック教徒と偽りホロコーストを逃れたのですが、その時のトラウマで5年ほど口がきけなくなった事があるそうです。

これはまんま、この小説の少年の境遇であり、この小説は彼自身の回想録とも言えなくはないのですね。戦後も色々と紆余曲折があり、最終的に彼はアメリカへわたり小説家となる。この小説は英語で書かれた作品です。他には、ピーター・セラーズ主演で映画化された「チャンス」の原作も彼の著作との事。こっちも読んでみたいな。映画もあまり好きじゃなかったけど、もう一度見直してみたい。
コジンスキーには色々と謎な部分が多かったそうですが、1991年、57歳の時に自殺をしています。
映画版は、その残酷描写から、途中退席してしまう人が続出した・・とか、色々とビビるのですが、体調を万全にして鑑賞に挑もうと思っています。
本は私が読んだ角川版は単行本も文庫の絶版で、私は図書館で借りて読みました。現在、入手可能な版は松籟社(しょうらいしゃ)刊行の「ペインティッドバード」です。人文系の京都の版元さんで、ちょい高額ですので興味のある方は是非図書館で。

![チャンス 30周年記念版 [DVD] - ピーター・セラーズ, シャーリー・マクレーン, メルヴィン・ダグラス, ハル・アシュビー, イエールジ・コジンスキー, ピーター・セラーズ](https://m.media-amazon.com/images/I/51LLnk0BsgL._SL160_.jpg)
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イエールジ・コジンスキー(著) 青木日出夫(訳) 角川書店
☆☆☆★★★

第二次大戦下、親元から疎開させられた6歳の男の子が、東欧の僻地をさまよう。ユダヤ人あるいはジプシーと見なされた少年が、その身で受け、またその目で見た、苛酷な暴力、非情な虐待、グロテスクな性的倒錯の数々―。(BOOKデータベースより)
きたる10月に全国ロードショー予定のチェコとウクライナの合作映画の原作を読みました。ツイッターでこの映画の情報とポスターを見て、興味が湧いて読んでみたのですが、これはきついです。残酷な描写の苦手な方は具合が悪くなると思いますのでご注意下さい。


http://www.transformer.co.jp/m/itannotori/
ただ誤解をして欲しくないのは、これが戦時下で過酷な目にあった少年の非情な出来事をドキュメンタリー的に描いたりとか、反戦的な意図をテーマとして描いた作品ではないという事です。
これほどの過酷な描写が次々と起こる物語を読み続けていられたのは、この小説が基本的にとてもファンタジックだからでした。主人公の少年は決して生きる事をあきらめない不屈の精神の持ち主であるのも、めげずに読ませる理由でした。
この少年は、自らが生き地獄の様な目にあいながら、その現状を常に客観的な視線で見つめているのです。これはこの小説のスタイルであると同時に、以前読んだ「夜と霧」のフランクルの姿にも重なって見えました。
人はあまりにも過酷な状況に陥ると、精神が分離し、もう一人の自分が苦しんでいる自分を客観的に眺める様になるのだという心理学的考察がされていたからです。
このひたすら続いていく人間の暴力性の中に見えてくるのは、本来、人間が持っている残虐性、どこまでも根強い民族差別の歴史的な連鎖です。これ、一体、いつまで続くんでしょうね?人間が滅亡するその日まで終わらないんでしょうか。
作者のイエールジ・コジンスキーは、ポーランド系ユダヤ人だったため、両親は彼を田舎へ疎開させ、カトリック教徒と偽りホロコーストを逃れたのですが、その時のトラウマで5年ほど口がきけなくなった事があるそうです。

これはまんま、この小説の少年の境遇であり、この小説は彼自身の回想録とも言えなくはないのですね。戦後も色々と紆余曲折があり、最終的に彼はアメリカへわたり小説家となる。この小説は英語で書かれた作品です。他には、ピーター・セラーズ主演で映画化された「チャンス」の原作も彼の著作との事。こっちも読んでみたいな。映画もあまり好きじゃなかったけど、もう一度見直してみたい。
コジンスキーには色々と謎な部分が多かったそうですが、1991年、57歳の時に自殺をしています。
映画版は、その残酷描写から、途中退席してしまう人が続出した・・とか、色々とビビるのですが、体調を万全にして鑑賞に挑もうと思っています。
本は私が読んだ角川版は単行本も文庫の絶版で、私は図書館で借りて読みました。現在、入手可能な版は松籟社(しょうらいしゃ)刊行の「ペインティッドバード」です。人文系の京都の版元さんで、ちょい高額ですので興味のある方は是非図書館で。

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この記事へのコメント
チェコとウクライナの合作映画と聞くと、それだけで興味がわきますが
この映画のことも、原作のことも知りませんでした。
かなり過酷な内容のようで、少なくとも映画は私には無理そうだな...
と思いますが、原作はどうかしら。
でもごみつさんも貧血になってしまったほどなのですね。
戦時中を描いた作品の中には、おっしゃるように
人間はかくも残酷になれるものなのか、と目を覆いたく
恐ろしくなるようなものもありますね。
フランクルもですが、ともすれば忘れたくなるような過酷な経験と向き合い
作品として残す勇気に敬意を覚えます。
「異端の鳥」
映画のこと、知りませんでした。3時間もあるのですね・・・
モノクロ3時間、過酷過ぎる映像に退出者続出という映画、耐えられるか判りませんが必ず見たいと思います!
原作読まれたのですね・・・
ごみつさんが貧血になるほどって!!
こんばんは。
私もツイッターで情報を得るまで、映画も原作も知りませんでした。
チェコとウクライナの合作ですが、ハーベイ・カイテルとかステラン・スカルスガルドとか何人か有名な俳優さんも出てるんですよね。
原作をどの程度、映像で表現してるかわからないので不安ですが、劇場鑑賞はしようと思ってます。
こういう体験をした人は、その事実と正面から向き合って、アーチストならば作品として昇華させることが、かえってトラウマからの脱却になるのかもしれませんね・・。
私、目に関する描写が凄く苦手なんですよ。この本の中でも目の残酷描写があって、気持ち悪くなってしまいました。その箇所だけすっ飛ばしました。(~_~;)
こんばんは。
私もこの作品、ツイッターでの情報ではじめて知りました。
そうそうモノクロで3時間もあるんですよね。とにかくラストまで、延々と過酷な描写が続くので、3時間耐えられるかちょっと心配。
セレンさんへのコメントにも書きましたが、私、目玉おやじがえぐりだされるとか、目のひどい描写がすご~く苦手なのです。
で、ちょっと血の気が引いてしまいました。( ̄▽ ̄;)
見るの楽しみですが、ちょっと怖いです。