博士と狂人

The Professor And The Madman
2018年/イギリス アイルランド フランス アイスランド (監)P・B・シェムラン
(演)メル・ギブソン ショーン・ペン ナタリー・ドーマー エディ・マーサン ジェニファー・イーリー ヨアン・グリフィズ スティーヴン・ディレイン スティーヴ・クーガン
☆☆☆★★

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https://hakase-kyojin.jp/

オックスフォード大学出版局から刊行されているThe Oxford English Dictionary(OED)をご存知でしょうか?現在刊行されている第2版(1989年刊行)は全20巻。壮大な英語辞書シリーズです。30年以上洋書を担当してきましたが、CD-Rom版もあわせて、私は1回も店頭では売った事がありません。(;^ω^)

とにかく英語に関するあらゆる情報を網羅した世界一の辞書と言っても良いと思うのですが、そもそもは世界中に植民地をつくり英語を話す人工を飛躍的に増大させた大英帝国がその威信をかけて編纂した辞書だったのですね。

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この映画はこのOEDの初版全10巻の編集にまつわる物語を映画化した作品です。原作はサイモン・ウィンチェスターのノンフィクション。

時は19世紀のヴィクトリア朝ロンドン。貧しい家庭に生まれ独学で言語学者となったジェームズ・マレー(メルギブ)はその才能を買われてオックスフォード大学の英語辞典編纂計画のリーダーに選ばれる。

それは全ての単語についてその用例をあらゆる文章からピックアップし、言葉の意味の変遷を辿っていくという目もくらむ様な膨大な作業。

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限られた人数では時間がかかりすぎると考えたマレーは、一般読者に向けてその用例のピックアップを手伝ってもらうアイデアを思いつく。本の中にそれをつのるチラシを挟み込んでおいたところ、一人の人物から膨大な用例が送られてきた。

それを送ってきたのはウィリアム・チェスター・マイナー(S・ペン)。彼は精神を病み被害妄想の中で殺人を犯し、精神病院に収監されている元アメリカ軍医だった・・・。

洋書担当にとっては英語学の最高権威である存在のOEDの誕生秘話だと言う事、2人の主役の演技もチェックしたくて劇場へ足を運びましたが、2人の演技は最高です!メルギブも、プライベートでの最低エピソードがウソなんじゃない?って思う位の慈悲深い人間性を演じきっているし、ショーン・ペンの狂気の演技も凄かったですよ。

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これが実話なのか・・と思う様な奇想天外な物語で、終盤では若きチャーチルも出てきます。映画としてはオーソドックスで少し物足りない感じもありましたが、とにかく背景の面白さでグイグイ引き込まれていきました。ストーリーの半分以上は、狂人であったマイナーの物語なのですが、当時の精神医療の在り方なんかも興味深いです。

それなりに科学的に色々とやってるんですが、実験的な治療が多くて結構ひどいんですよ。

それにしても大英帝国ってちょっと色々とおかしいんですよね。(笑)毎回思うのですが、この尊大さは一体どこから来てるんだろうと思います。そしてその尊大さがこの驚くべき辞書を誕生させたのですね。感慨深く鑑賞いたしました。

ところでWikiを読んでいたら、現在第3版を編集中らしいのですが、その3版は恐らく電子版(それとオンライン)だけになるらしいです。ちょっとさびしい気もします。


博士と狂人 世界最高の辞書OEDの誕生秘話 (ハヤカワ文庫NF) - サイモン ウィンチェスター, 鈴木 主税
博士と狂人 世界最高の辞書OEDの誕生秘話 (ハヤカワ文庫NF) - サイモン ウィンチェスター, 鈴木 主税

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この記事へのコメント

Tae
2020年10月30日 21:50
こんばんは!
なんと、私もたったいま観てきたところです。
OEDの誕生にこんな壮大かつ壮絶な物語があったなんて、もう、ビックリ!
いろいろな意味でドキドキできる、魅力的な作品でした。
そして、大英帝国の尊大さに関する謎を探るうえでも、実に意義深い作品だと思います!

そういえば、その昔、ごみつさんのお店のバーゲンか何かで、OEDを買った覚えがあります。もちろん、ペーパーバック版ですが('◇')ゞ
ごみつ
2020年10月30日 22:09
Tae さん

こんばんは。
おお、Taeさんもご覧になってきたんですね!映画、良かったですよね。

映画を見に行った時、ヒューマントラストと角川シネマを間違えてしまい、映画に遅刻しそうになり焦りました。(笑)
早めに出てて良かったです。

いわゆるOEDはこの20巻ものだけなんですよ。で、その子分たちがたくさんいるのです。
店頭で普通の人が購入する辞書として一番大きいのはShorterっていう2巻セットのハードカバー。
ペーパーだと一番売れてるのがAdvanced Learner'sっていう学生向けのやつ、あとはConciseかPaperback Dictionaryってやつです。一番小さいのがMiniっていう文庫の半分位ので、その他にもいっぱいあって、覚えきれません。(笑)

私は大英帝国と中華帝国が好きなのは、あの尊大さ故だと思います。おもろいんですよね。( *´艸`)
2020年10月31日 01:08
ごみつさん、こんばんは。
この映画、知らなかったですが、お話をうかがって
「舟を編む」の英語辞書版みたい、と思いました。
こういう話、好きなので興味深いです。

私の電子辞書に、ODE(Oxford Dictionary of English)と
Oxford Sentence Dictionary が入っていて愛用していますが
これもOEDの中の一部なのかしら?

ショーン・ペンの狂気の演技も見てみたいです♪
ごみつ
2020年11月01日 01:08
セレンディピティ さん

こんばんは。
そうそう、私も「舟を編む」(未読、未見ですが)思い出しました!

ただこっちは連合艦隊を編むっていう感じです。^^; マレー博士はTまでいったところで亡くなってしまったそうで、完成したOEDを見せてあげたかったです。

ODEはShorterに次いで大きな机上版で、判型はB4くらいあるかな。これが入ってれば研究者以外の方にはパーフェクトだと思います。

他にもCollocationだの、Americanだの、Rhymingだの、いっぱいあるんですよ。どの辞書のおおもとはOEDらしいですよ。(*'ω'*)
kinkacho
2020年11月03日 19:42
ごみつさん、こんにちは。
OEDに並ぶ辞書が日本にもあります!
諸橋大漢和辞典!!
全13巻と索引1巻。漢文史料を読むのに必要な用例が網羅されています。
この辞書の誕生にもエピソードがあって、諸橋先生がコツコツと集めていた資料が東京大空襲で全て灰塵に帰してしまい、一からやり直したというお話です。
燕三条に諸橋記念館があるので、いつか行きたいです。
ごみつ
2020年11月03日 23:51
Kinkacho さん

こんばんは!

「諸橋大漢和辞典」って初めて知りました!大修館から出てるんだ!
1冊¥20,000近くするから揃えるのも大変だけど、研究者には必需の辞書なんでしょうね。

漢字は、もう「いい加減にしなさい!」っていうくらい文字数が多いので(同じ漢字のバリエーションとか)中国にはもっと凄い漢字辞書があるのかもですね。

それにしても空襲で焼失してしまったとは気の毒です。(>_<)