方丈記

鴨長明 著 青空文庫 電子書籍
☆☆☆☆

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行く川のながれは絶えずして、しかも本の水にあらず。よどみに浮ぶうたかたは、かつ消えかつ結びて久しくとゞまることなし。


私が何となく「無常」というものについて考える様になったのは、映画「リトルブッダ」を鑑賞してからでした。仏陀の生まれ変わりであると認定されたアメリカ人の少年に、チベットの僧侶が街中の人込みをビルから見下ろしながら語った言葉。

「100年後にはこの人たちは全員いなくなる。それが世の無常という事なのです。」

鴨長明の「方丈記」と、冒頭の文章は学校で習いますから、昔から知ってはいましたが、きちんと全文を読むのは今回が初めてでした。

最初、キンドルの無料版をダウンロードしたところ原文だったので「失敗した!」と思ったのですが、20~30ページ程度の短い随筆なので無理やり読了。

その後、佐藤春夫による現代語訳も読みました。勘違いしていた所だらけでやっぱ古文は私にはムリだわ・・となりました。

「現代語訳 方丈記」
佐藤春夫 著 岩波現代文庫
☆☆☆☆

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「方丈記」は、鴨長明が晩年に、京の郊外にある日野山に一丈四方(方丈)の小庵をむすび隠棲した折に綴ったもの。

佐藤春夫の解説文で知ったのですが、晩年に鴨長明は鎌倉に呼び出されてていて、二度と京には戻れまいと、自身のこの浮世への想いを急いで書き記したものである可能性もあるだろうと書かれていました。結局、長明はまた京に戻ってきています。

大福光寺本(鎌倉前期写、伝 鴨長明自筆)

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この作品で誰しもが感銘を受けるのは、当時、日本(京)を襲った様々な厄災の詳細な記述でしょうね。

平安末期~鎌倉幕府成立までを生きた人で、ただでさえ凄い政治的な動乱期。それに加えて、4つの大きな災害に襲われて多数の死者を出しています。

まずは安元の大火(1177年)。都の東南にある宿屋から出火、それは瞬く間に京都中に燃え広がり、公卿の家だけでも16軒、民の家屋に至ってはその3分の1が消失したそうです。

続いて1180年の治承の竜巻。これがけっこう凄まじい竜巻で、多くの家屋を飲み込んで吹き飛ばし、甚大な被害を起こした様です。

続く1181年から1182年にかけては大飢饉に襲われ、膨大な人数の餓死者を出したそうで、養和の飢饉と呼ばれています。また同時期に疫病が蔓延。それに輪をかけて、1180年からは平清盛による福原遷都が行われていて、もうこの頃は民草は生き残るだけでも大変だったのではないでしょうか?

大河ドラマとかでは描かれませんでしたが、この福原遷都の際には、多くの公家もともに引っ越し、もとから住んでいた福原の住人が大勢追い出されたと「方丈記」には記されていました。

とどめの極み付けは1185年8月に発生した元暦の地震(文治京都地震)、で、記述を読むとほぼ東日本大震災に匹敵する規模です。その後余震は3か月にわたり続いて、徐々におさまっていった様子も描かれ、これは非常に重要な記録ですね。ちょうど同じ年の3月(4月)に、壇ノ浦で平家が滅亡していて、平家の怨霊によるものだともうそぶかれているみたいですね。

方丈(復元) 下鴨神社(京都市左京区)境内の河合神社に展示。

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まあ、こんな厄災にたくさんあい、人々がいかにたやすく財を失い命までも失うかという事を知り、平家滅亡、鎌倉幕府成立の栄枯盛衰を体験し、全ては無常である心持になっていくのは本当によくわかる気がします。

それにしても、農民はもちろんの事、市井の人々の暮らしっていうのは、厳しかったろうな~。

佐藤春夫氏の本には、鴨長明と吉田兼好を比べたりしたエッセイなども収録され面白かったです。今度は徒然草を読もうかなと思ってます。


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この記事へのコメント

2020年12月09日 07:38
ごみつさん、おはようございます。
古典を次々と読破されていますね。
私は理由あって、古典から気持ちが離れてしまったのですが
もったいないことをしたと思います。
でも現代語訳で読むのもいいですね。

この方丈記で書かれている災禍の連続は
大地震、水害、コロナなど、さまざまな困難に向き合っている
今の私たちにも通じるものがありますね。

昨年、下鴨神社に行ったのに、河合神社に寄りませんでした。
ここに方丈が展示されているのですね~
見逃してしまって残念。
こういう小さな空間で最小限のものだけで余生を送るのも悪くないな~^^
himary
2020年12月09日 16:25
方丈記は高校の時、古典の授業で習ったっきりですが、最初の「ゆく川の流れは絶えずしてしかも元の水にあらず」の文章だけはよく思い出します。文章は正確でないかもしれませんが(汗)。
最近はドラマ「おカネの切れ目が恋のはじまり」に方丈記の文章が草刈正雄の朗読で効果的に使われていて、三浦春馬君の最後の出演ドラマだったこともあり、無常感をしみじみと感じ入って、いつか現代訳で読んでみたいなと思ってました。
その方丈記には当時の災害をこんなに克明に記していたのですね。その冷静さや俯瞰して世の中を見る目線が凄いなあ。
そういえば、お寺の僧侶が毎日死者の額に「阿」の字を書いてあげて死者の数を毎日記録したという文章もこの方丈記に書かれていたような記憶が・・・う~ん勘違いかもしれませんが。なぜかこれも遠く記憶に残ってます・・・
そして方丈記が平家の盛衰の時代と重なるのも驚きました。考えてみれば時代的に当然ですね。災害の話を聞くと、もう宮廷の政治文化は世間に対応できなくなっていたのだなと感じました。
ごみつさんの記事を読んで読みたい!という気持ちが強まりました。
ごみつ
2020年12月10日 00:36
セレンディピティ さん

こんばんは。
次々と言っても、まだ源氏物語とこの方丈記だけです。(笑)
方丈記はすごく短い随筆なのですぐに読めちゃいますよ。

私も学生時代、古文が苦手できちんと勉強してなかったんですよね。漢文は嫌いじゃなかったのですが、どうにも習得出来ませんでした。(;^ω^)
もっと一生懸命勉強しておけば良かったと、この年になって思います。

「方丈記」はこんなに災害の記述があると思ってなかったので驚きました。こういう経験の中で、隠遁生活をする様になったみたいですね。
あんなに人や建物が集まってるのは良くない!みたいな事を書いてて、ソーシャルディスタンスの先駆けみたいです。

方丈は大体四畳半くらいみたいですよ。一人で質素に暮らすなら十分かな。台所は屋外にあったみたいです。そういうのがいちいち説明されてて面白かったですよ。
ごみつ
2020年12月10日 00:49
himary さん

こんばんは。

そうそう、高校の時に習うから知ってるんですよね。やっぱり学校の勉強って大切ですね。

それとお寺の僧侶が死者の額に「阿」の字を書いたっていう記述はまさしく「方丈記」です。
飢饉の時、死骸が道に放置されていたので供養の意味で字を書いて、数も数えたんですよね。数万単位の物凄い数だったそうです。それにしても一人でこれをやったのだとしたら凄いお坊さんですね。(゚Д゚;)

私も、読んでたら清盛の遷都の話が出てきてビックリしました。平家は清盛の死後、ホント数年で滅亡しちゃってるんですね・・。この遷都は人災として災害の記述の仲間に入れられてました。

「方丈記」20~30ページしかなくてあっという間に読めちゃうので、是非是非。

三浦春馬くんの自殺はショックでしたね。(竹内結子も)私、今度公開になる映画「天外者」、見に行こうと思ってます。
ヌマンタ
2020年12月16日 10:09
方丈記で不可解なのは、天災を取り上げての無常観は分かるのですが、戦乱には触れていないことです。長明の生きた時代は、平安貴族が実権を失い、平家、源氏が実権を奪った激動の時代です。長明自身はけっこうな家柄の子弟ですが、出世が叶わなかったのは天災だけが原因ではないはず。彼本人があまり世渡りの上手い人ではなかったようですが、武士の政治介入の影響は相当にあったはず。それなのに触れていない。

長明は文章の達者な方ですが、やはり現実逃避していたように思えてならないのです。それを無常観で説明されていも、ちょっと納得いかないと、大人になってから思いました。十代の頃は好きな随筆でしたけどね。
ごみつ
2020年12月16日 18:50
ヌマンタ さん

こんばんは。

ヌマンタさんと同じ意見の方を幾つかネットで見かけました。

そうそう、訳者の佐藤春夫さんも、鴨長明は世渡りが苦手な人だっただろうと書かれてました。
だからこそ、こんな隠遁生活に入っちゃったんでしょうけれど。

どうなんでしょう、「方丈記」は凄く短い随筆なので、他で戦乱について述べてる著作はないのかしら?
いや、とにかく、これほどの激動期ですから、もっと詳しく同時代人の感想や記録を読みたいですよね。

この「方丈記」がらみで、西行にもちょっと興味が湧いてます。興味が広がって行くのは楽しいです。