JR上野駅公園口

柳美里 著 河出文庫
☆☆☆★★★

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一九三三年、私は「天皇」と同じ日に生まれた―東京オリンピックの前年、男は出稼ぎのために上野駅に降り立った。そして男は彷徨い続ける、生者と死者が共存するこの国を。高度経済成長期の中、その象徴ともいえる「上野」を舞台に、福島県相馬郡(現・南相馬市)出身の一人の男の生涯を通じて描かれる死者への祈り、そして日本の光と闇…。「帰る場所を失くしてしまったすべての人たち」へ柳美里が贈る傑作小説。(BOOKデータベースより)

今年度「全米図書賞・翻訳文学部門」受賞作との事で、今、とても売れている作品です。このタイトルにも魅かれるものがあり私も読んでみました。

実は柳美里さんの作品を読むのはこれが初めて。何となく敬遠していた作家さんだったのですが、個人的にはこれほど文学性の高い日本の現代小説を読むのは久しぶりでした。

主人公の男性「わたし」は、平成天皇と同い年。長男は令和天皇と同い年。福島出身のわたしは、家族を養うために人生の大半を東京での出稼ぎで過ごした。

そんなある日、愛する長男が病死する。放射線技師の国家試験に合格した矢先だった。続いて長く苦労ばかりかけていた妻も亡くなる。

老いたわたしは既に嫁いでいた長女の家で暮らす事になるが、迷惑をかけたくないと感じたわたしは家出をし、東京でホームレスとなってしまう。

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   ~高度経済成長時代に出稼ぎに出たわたしは上野駅に降り立った。~

わたしの一人称による日本の戦後の姿、貧しかった地方の家族の姿、原発で貧しさから脱却した故郷が迎えた東日本大震災、そして日本人を呪縛してやまない天皇制というものの描写。

これ等が一人の人生を通して描かれ、やがて迎えるわたしの終焉へと向かっていくのですが、なかなか凄い小説でした。

柳美里さんは、ホームレス達へのインタビューを繰り返し、この物語を練り上げていったそうです。それならノンフィクションの方がはるかに内容が良くなるという意見もたくさん見かけましたが、小説だけが持つ力、フィクションだけがうみだす普遍性というものをもっと信じて欲しい。

上野駅周辺、上野の山、不忍池界隈は、長く近くに住んでいた事もあり、描写される風景も全て頭の中で再現出来たのもこの作品にシンパシーがわいた理由かもしれません。

陰鬱な作品なので、好みははっきりとわかれる作品だと思いますが、今現在を生きる私達の胸にも迫る作品だと感じました。

彼女の他の作品も読んでみようと思う。


ゴールドラッシュ (新潮文庫) - 美里, 柳
ゴールドラッシュ (新潮文庫) - 美里, 柳

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この記事へのコメント

2020年12月20日 21:25
ごみつさん、こんばんは。
この作品、私もやはり「全米図書賞」受賞がきっかけで知り
図書館に予約を入れているところです。
タイトルやテーマに興味を持ち、是非読みたいと思っていました。

私も柳美里さんは、これまで何かと話題(問題?)となっていて
なんとなく敬遠していた作家さんです。
でもごみつさんの記事を拝見してますます期待が高まりました。
おっしゃるように、今の時代にこそ読むべき小説のようですね。
ごみつ
2020年12月21日 02:06
セレンディピティ さん

こんばんは。
これ、今、かなりのベストセラーなので、借りられるまでちょっと時間かかるかもですが、なかなかの作品でしたので、待つ甲斐あると思います。

かなり陰鬱な作品なのですが、心に残るものがありました。

柳美里さんは、雰囲気やら言動に、ちょっと相いれないものを感じてて敬遠してましたが、作家としての力量は確かだと思いました。
他の作品も読んでみようと思ってます。(*'ω'*)