ベルナール・ビュフェ回顧展 私が生きた時代

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2020年11月21日から2021年1月24日までBunkamura ザ・ミュージアムで開催されていたベルナール・ビュフェの展覧会に行って来ました。

ビュフェを初めて知ったのは、社会人になって間もなくの頃、お客様からの問い合わせででした。

あの当時(80年代)は、豪華な美術書がたくさん発刊されていたんですよね。私が美術好きになったのも、今の仕事の影響が大きくて、問い合わせを調べる経験が美術への興味へつながっていった感じです。

20代から30代にかけてスタンダードジャズボーカルのアルバムをたくさん集めていたのですが、その頃に買った1枚、"Ella Fitzgerald Sings The George and Ira Gershwin Song Book"という5枚組のボックスLPセットの袋の挿絵がビュフェでした。

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確かビュフェの絵も目当てでこの高額LPを購入したのですが、これ引っ越しの時に処分しちゃったんですよね・・。何という愚か者。(-_-;)

と言う事で、個人的にはビュフェの絵に対しては、若かった頃の思い出や、ひたすらあらゆる意匠に興味があった頃の自分自身の瑞々しい感性が思い起こされるのです。

今回の展覧会で、初めてビュフェの作品を年代を追って鑑賞する事が出来ましたが、やっぱり心を掴まれるのは最初期の作品群でした。

ほとんど色のない、黒、白、グレーをメインとした色彩と、虚無の表情を浮かべる人物達、人気のまったくない部屋、風景。それらを見ていると、大きな絵が多い事もありまるでビュフェの心象風景の中に溶け込んでいく様な感覚を覚えました。

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これは第二次世界大戦が終結し、ナチスから解放されたフランス人の戦後の虚無感、時代の空気の表現でもあったと思うし、何人かの日本人の彼の作品に対する印象を読んでみても、戦中~戦後を知っている世代ほど、彼の作品に対し、同じ心象風景を感じとっているのがわかります。

個人的には静物画、風景画に私は心を惹かれました。人物画はちょっと痛々しすぎたり、内面の苦しさの吐露が激しすぎてちょっと辛いんですよね。

ビュフェはもしかして、生命というものに(特に人間に対して)、大きな興味を魅かれながらも、気味の悪さも感じていたんじゃないだろうか?などと思ってみたり。

1958年「ニューヨーク・ブロードウェイ」

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1959年「夜会服のアナベル」ビュフェの奥さん。彼は彼女と出会えてホントに良かった。

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この頃、そういう表現をしたい作家の多くが抽象画として作品を発表しているのですが(ジャクソン・ポロックみたいに)どこまでも時代遅れと言われていた具象画にビュフェはこだわったそうです。

1963年「小さいミミズク」ビュフェの作品の中では貴重な可愛い1枚

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1970年代に、ビュフェは一度、懐古趣味的な作品を描いていて、ず~~っと彼の作品を心の痛みとともに鑑賞し続けていると、少しホっとする感じもします。ここでは彼の画家としての技量の高さがわかり、なかなか興味深かった。

特にビュフェがクールベが好きだったというプレートを読んで、同じくクールベが好きな私は非常に嬉しくなりました。画風がまるで違うから気が付きにくいけれど、何となく絵に込められたものに少し似たものも感じる。好きな作品というのは、どこか根底のところの共通する何かが、私の琴線に触れているのだろうな。

ただ、このあたりの正当的な絵画は愛好家からの評判は良くないみたいです。

1973年「ペロス・ギレック」

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会期はもう終わってしまいましたが、この展覧会の作品は全て静岡県にあるベルナール・ビュフェ美術館の所蔵品との事で、そちらへ足を伸ばしてみるのも良いかもしれません。ここは世界最大レベルのビュフェ美術館との事です。私もいつか行ってみたいです。

ベルナール・ビュフェ美術館

https://www.clematis-no-oka.co.jp/buffet-museum/

今回、記事をつくるに先だって、ベルナール・ビュフェ美術館刊行の本を読みました。収蔵作品に加えて、赤瀬川源平氏、加藤周一氏等のビュフェの作品に対する文章も掲載されてますよ。

「ベルナール・ビュフェ 1945ー1999」

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おまけ 

せっかくなんで「ガーシュウィンソングブック」から1曲聴きまへんか?

But Not For Me
https://www.youtube.com/watch?v=u0TfkySxDMo&list=OLAK5uy_mW23xH99dmAPIo25YrWWxnGifstwpmuOc&index=2

ビュフェとアナベル - ベルナールビュフェ美術館, ビュフェ美術館=
ビュフェとアナベル - ベルナールビュフェ美術館, ビュフェ美術館=

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この記事へのコメント

2021年02月09日 23:15
ごみつさん☆
とても特徴的な人物を描く方ですよね~
やはり色のないグレーの世界に痩せた登場人物ばかりなのは、戦争体験あっての心象心理の表れなのかもしれないですね。
私は油絵のモデルになりやすいでっぷりと太った生っ白い人ばかり描くより、デザイン性があってあってずっと好きですね☆
himary
2021年02月10日 09:03
ビュフェの作品を、そういえばまだきちんと鑑賞していないなと気づきながら興味深く読みました。
鋭く研ぎ澄まされた感性を感じると共に、自分の線を貫き通す我が道を行く自我の強さも感じて、またその線が味わい深くて、ごみつさんの愛情を感じる感想と解説を読んで更に興味がわいてきました。
人物画ではやはりアナベルさんの肖像画は素敵ですね!
日本に世界最大のビュフェの美術館があるというのも意外でした。ビュフェの黒い線にすっと受け入れる素地があるのかも。墨絵や書道の文化がありますもんね。
フィッツジェラルドさんの歌声も素敵ですね。今聞きながらコメントを打ってます。
断捨離するときは、私も勢いでいろいろ処分してしまい後で尾を引いてしまう事がよくあります(汗)。ブック〇フに出した後は貴重な資料となる本などは、自分のところに置きっぱなしにするより、誰かがまた手に取ってその本が新たに役に立ちますようにと祈っています。
ごみつさんの貴重なLPが新たな愛好家の手に渡りまた聞く人を楽しませていますように・・・
2021年02月11日 00:56
ごみつさん、こんばんは。
ベルナール・ビュフェ展に行かれたのですね。
Bunkamuraらしい企画展だな~と気になっていました。
堪能されたようで、よかったですね。

私はビュフェといえば、なんといっても
サガンの小説の表紙になっていたことを思い出します。
それゆえに小粋でおしゃれな。。。という印象がありましたが
骨ばった独特のタッチは、ジャコメッティの彫刻にも
近いものを感じます。

以前ビュッフェ美術館のある「クレマチスの丘」に行ったことがあるのですが
この日は園内にあるもうひとつの美術館に入ったため
ビュッフェ美術館には入らなかったのです。
いつか改めて訪れたいです。
ごみつ
2021年02月11日 01:06
ノルウェーまだ~む 様

こんばんは。
ホント、一見しただけで、ビュフェだ!ってわかるのは、凄い事ですよね。
戦争体験もでしょうが、父親に愛されてなかった上に、大好きだった母親を早くになくしたりとか、そんな家庭環境も影響があったのかもしれませんね。

ビュフェの結婚前の恋人が、ピエール・ベルジェっていう男性で、ビュフェがアナベルと結婚したので、別れてその後イヴ・サン・ローランの共同事業者兼恋人になってるんですよね。
そのあたりの芸術家界隈の人間模様も興味深いので、今度サン・ローランの映画も見てみようかと思ってます。(*‘∀‘)
ごみつ
2021年02月11日 01:21
himary 様

こんばんは。
コメント有難うございます。

奥さんのアナベラは中性的な感じの美人で、彼が亡くなるまで(自殺です)終生つれそって彼を支えてあげたみたいです。

そうそう、ビュフェの大きな美術館が静岡にあるのは、私も今回の展覧会で初めて知りました。
めっちゃビュフェのファンのお金持ちの銀行家(スルガ銀行頭取の岡野光喜氏)が、コツコツと終生集めた作品らしいです。

やっぱりビュフェの作品も出来の良いもの悪いものとあるそうなのですが、この銀行家さんは、彼の作品の軌跡がわかる様に失敗作と思っても購入していて、そのせいでかなり上質なコレクションになってるそうです。

音楽も聴いてくれて有難う~。実は引っ越しの時、本とCDはブックオフしたのですが、LPは引き取ってくれなくて何と捨ててしまったのです!(ToT)
ああ、今、思うと何という事をしてしまったのだと後悔してますが、あの頃、引っ越しのための時間がリミットにきてたんでエイヤ!とやっちゃったんですよね。(泣)
ごみつ
2021年02月11日 01:30
セレンディピティ さん

こんばんは。

セレンさんは、クレマチスの丘、行かれた事があるんですね!良いな~。
春から夏にかけて訪れたら、きれいなクレマチスがたくさん鑑賞出来そうですよね。
ビュフェの他にも幾つか美術館あるし、レストランもあるし丸一日楽しめそう。私もいつか訪れてみたいです。

そうそう、ビュフェの絵の人物はよくジャコメッティと比べられたりしてるみたい。棒みたいにまっすぐで細いので似てますよね。

新潮社のサガンのブックカバーは展覧会でも展示されてましたよ。お洒落で素敵ですよね。(*'▽')
ごみつ
2021年02月12日 00:22
セレンディピティ さん

こんばんは!
記事のリンク、有難うございます。

セレンさんは、5月に行かれたんですね。ベストシーズンって感じ。
お花の写真もとってもきれいです。そうそう、ローズガーデンもあるんですよね。

これはいよいよ行きたくなってきたな~。(*‘∀‘)♡