すばらしき世界

2020年/日本 (監)西川美和
(演)役所広司 仲野太賀 六角精児 白竜 キムラ緑子 長澤まさみ 安田成美 梶芽衣子 橋爪功 北村有起哉
☆☆☆★★★

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https://wwws.warnerbros.co.jp/subarashikisekai/

直木賞作家・佐木隆三のノンフィクション小説『身分帳』を原案に、役所広司主演で描く感動の人間ドラマ。真っ直ぐで思いやりもあるが癇癪持ちの元殺人犯を主人公に、カタギとして人生をやり直そうと奮闘するものの、なかなか世間のルールと折り合いをつけられず悪戦苦闘する姿と、そんな彼に手を差しのべる人々との心の触れ合いを見つめていく。(allcinemaより)

劇場鑑賞はヤクザものが続いてしまってますが、これは監督が西川美和だし、評判もすこぶる良かったので劇場へ足を運びました。

原作がドキュメンタリーな事もあり、「ヤクザと家族」よりもさらに現実味があり、一般の人々がたくさん登場するので、地に足の着いた社会ドラマとして堪能出来ました。

主人公の三上正夫は幼少時に親に捨てられ、保護施設で育てられる。10代になると施設を抜け出し、ヤクザ者となる。

水商売をしていた妻(安田成美)を脅かしにきた若いチンピラを、三上は激昂のあまり殺してしまう。正当防衛は成り立たず、妻とは離婚をして刑務所へ。13年の懲役を終え、堅気として生きる事を決意する三上だったが、現実社会はあまりにも厳しかった。

そんな時、テレビ局から彼の日常をドキュメンタリーにしたいという声がかかる。三上は、わかれたきりの母親を探すための放映を条件にそれを引き受けるのだが・・。

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これも凄く良い作品でした。「ヤクザと家族」に似ている部分もたくさんあるのですが、堅気として生きるために主人公の前に立ちはだかる壁の描写が、ずっとリアルで具体的でした。

放送作家の若い男性(仲野太賀)、三上の身元引受人になってくれている弁護士夫婦(橋爪功、梶芽衣子)、近所のスーパーの店長(六角精児)、生活保護を担当してくれている役所の男性(北村有起哉)、そんな人達の援助なども描かれていく。

これが都合良すぎっていう意見も見かけましたが、役所広司を見てればわかるじゃんか、正義感が強く単純で、彼は本来愛すべき人間なんですよ。だからまわりが助けてくれる。

ただ不正義を見て見ぬふりが出来ずに暴力沙汰に及ぶ、激昂すると何をするかわからない任侠気質が、社会人として生きていく事を拒んでいるのです。

まわりの人は皆、彼にアドバイスする「時には見て見ぬふりをしなければならない事がある」と。

かようにして、この社会の欺瞞に溢れた平和と、三上の生き方を対比させて描いているのですが、見ながらしみじみと感じるのは、普通の社会っていうのはヒーローなんて決してうまれないし、うまれてきちゃいけない世界なんだなっていう思いでした。

役所広司がすっごい良かったよ。特にカタギの世界へ戻る努力に愛想がつきて、昔のヤクザ仲間に連絡をとった後のエピソードは強く心に残ったな~。

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見終わって全体を思い出すと、実に様々なテーマが物語に練りこまれていた事を感じて、心の中の余韻が未だに続いています。

原作は直木賞作家、佐木隆三のノンフィクション小説「身分帳」。身分帳とは刑務所で、収容者の経歴や入所時の態度などが書かれた書類の事で、普通は外部にもれないのですが、とある事からそれを入手した放送作家の若い男性が、これを書籍に仕上げるという展開になっていました。

原作も近いうちに読みたいと思ってます。佐木隆三著なんで相当骨太な作品だろうと思い読むのが楽しみです。


身分帳 (講談社文庫) - 佐木隆三
身分帳 (講談社文庫) - 佐木隆三

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この記事へのコメント

2021年03月02日 21:22
ごみつさん、こんばんは。
先日、土曜日朝の「サワコの朝」に役所広司さんが出ていて
この映画のことを紹介していて、気になっていました。
お話をうかがうと、やはり考えさせらえるよい作品のようですね。
時間が許せば、是非見てみたいです。
原作の方もよさそうですね。

ポスターの役所広司さん、どちらもとてもよい表情ですね!
2021年03月02日 23:17
ごみつさん☆
立て続けにやくざ映画でどちらも気になっていた作品ですが、どちらか?となるとやっぱりこちらの作品がオススメでしょうか?
このところすっかり映画離れになってしまっていて・・・
原作もとても良さそうですよね。
ごみつ
2021年03月03日 00:41
セレンディピティ さん

こんばんは。
役所広司さん、テレビで映画の紹介されてたんですね。
まあそれにしても、役所広司はいつもどんな役やっても素晴らしいです。

もうすぐ司馬遼太郎原作の「峠」も公開なのでめっちゃ楽しみです。

この映画、良かったですよ。女性の監督作品らしい柔らかさもあるし、暴力的なシーンもほとんどないのでお勧め。

私は、ず~っと泣きながら見てました。(;_:)
ごみつ
2021年03月03日 00:46
ノルウェーまだ~む 様

こんばんは。

「あ~、何かヤクザ映画好きみたいだな~」などと思いながら(笑)見に行ってきました。
両方とも秀作ですが、この「すばらしき世界」の方が地に足の着いたお話で、見やすいと思います。

底辺に流れているテーマは、どちらも同じだけれど、娯楽色と刺激を求めるなら「家族とヤクザ」、社会派人間ドラマを求めるならこっちって感じかな。

原作はどんなかな。読むのが楽しみです。(*'ω'*)
ここなつ
2021年03月04日 21:07
こんにちは!
色々なことを思いながら鑑賞できる作品でしたね。
「ヤクザ映画」というより、転落と再生の映画と言った方がいいのかな?
でも、三上にとっては、転落ではなくて正当な正義なのですよね…。
ごみつ
2021年03月06日 22:03
ここなつ 様

こんばんは。
コメント有難うございます。

そうですね、これいわゆる「ヤクザ映画」ではないですよね。
一人の男の再生の物語でした。

ラストの雨の中、洗濯ものとりこむくだりのシーンは良かったな。何だか胸がしめつけられる感じでした。

その前の介護施設でのシーン。普通の人はああやってまわりと折り合いをつけながら生きている。

ああいう生き方は、三上には耐えられなかったんじゃないかな~なんて思いました。

良い映画でしたよね。堪能しました。
「ヤクザと家族」はご覧になりました?これも良かったんですよ。未見ならDVDになった時にでも是非。(*'ω'*)