掃除婦のための手引書

A Manual For Cleaning Women
ルシア・ベルリン著 岸本佐知子訳 講談社
☆☆☆☆

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毎日バスに揺られて他人の家に通いながら、ひたすら死ぬことを思う掃除婦(「掃除婦のための手引き書」)。夜明けにふるえる足で酒を買いに行くアルコール依存症のシングルマザー(「どうにもならない」)。刑務所で囚人たちに創作を教える女性教師(「さあ土曜日だ」)。自身の人生に根ざして紡ぎ出された奇跡の文学。死後十年を経て「再発見」された作家のはじめての邦訳作品集。(BOOKデータベースより)

2019年に邦訳が刊行された時、かなり話題になっていた本作をやっと読みました。表紙の写真は著者本人で、その美人ぶりからも手に取った方が多いと思いますが、彼女が美しければ美しいほど、読者の心にも痛みが伝わってくる。そんな小説です。とにもかくにも掛値なしに素晴らしい短編集でした。

ルシア・ベルリンの人生は波乱万丈で、幼い時から重度の脊椎側弯症に苦しめられ、家族の大半はアルコール中毒。特に母親が彼女に与えた負の影響は絶大で、かつ母親は自殺をしてしまっています。

3度の結婚はすべて失敗し、4人の子供を女手ひとつで育てあげるも、彼女もアルコール中毒者となってしまう。(50代でたちなおります)

自身の体験に根差した小説を、20代の頃から書き始める。多くの同時代作家に衝撃を与えながらも大きな成功をする事もなく2004年に68歳で逝去。2015年に"A Manual For Cleaning Women"が出版されるとたちまちベストセラーとなる。

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傍目には悲惨な状況に自分が置かれているとして、それを悲惨と捉えるのか、「人生はこんなもの」として捉えられるかは、その人の資質次第。

彼女にとって、恐らくは幸運であったのは、それらの厳しい人生体験そのものを作品に昇華する能力があった事で、私はこの小説を読みながら、「小説というもの」の在り方をあらためて考えさせられました。また文章が素晴らしいんですよ。

この小説の素晴らしさは、私ではちょっと説明しきれないので、興味がありましたら是非読まれてみて下さい。女性には特にお勧めですが、男性も感銘をうけると思いますよ。

この邦訳版はオリジナルの半分しか作品がないので、残りの半分も是非邦訳していただきたいです。


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この記事へのコメント

2021年10月11日 14:51
ごみつさん☆
これはかなり気になります。短編ならば読みやすそうですね☆
近眼と老眼と乱視のせめぎあいで、なかなか本を長時間読めなくなっている私ですが、短編なら楽しめます♬
これほどまでの美貌を持ちながら様々な苦難を体験するというのが「持たざる者」からすると不思議でもありますが、美しいからこそ背負う困難もあるのかもしれませんね。
今度本をチェックしてみます!
ごみつ
2021年10月11日 18:02
ノルウェーまだ~む 様

こんばんは。

読んでると、ルシアの家族はみんなルックスが良かったみたいで、家系なんでしょうが、本人も含めて多くの家族がアル中になっちゃってるんですよね。

辛い内容なんですが、彼女の文章が詩的で美しく、爽やかな気分にすらなります。

美人で聡明なので男性がどうしても放っておかないのでしょうが、結婚してるのに子連れで駆け落ちしたりとか、どうにもこうにも波乱万丈を自ら招いてしまうんですよね。
そういう自分を、冷静に客観的に記述した文章もあり、これこそが小説家なんだろうな・・って思ったりしました。

単行本なので字も小さくないので、図書館で見かけたら是非。
あと、字が読み辛い様でしたら、電子書籍はお勧めですよ。いくらでも字を大きく出来るし、光ってるので目が疲れててもちゃんと読めます。
2021年10月11日 22:36
ごみつさん、こんばんは。
この小説、知らなかったです。
タイトルにも、表紙にもちょっと惹かれるものがあります。

なかなかハードな人生が描かれているようですが
同じ女性として共感できる部分もありそうですね。

今いくつか抱えている本が読み終えたら
手に取ってみたいと思います!
ごみつ
2021年10月13日 01:04
セレンディピティ さん

こんばんは。
この小説、発刊時に地味に話題になってました。

波乱万丈型の人っているけれど、まさにそんな感じの女性で、脚色を加えながら自らの人生を語って行く私小説タイプの作品でした。

セレンさんの好みのタイプの物語じゃないかもですが、文章がとても素晴らしいのでもし機会あったら是非。短編集なので読みやすいですよ。(*‘ω‘ *)