女のいない男たち 村上春樹

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村上春樹 著  文春文庫
☆☆☆★★★

舞台俳優・家福をさいなみ続ける亡き妻の記憶。彼女はなぜあの男と関係したのかを追う「ドライブ・マイ・カー」。妻に去られた男は会社を辞めバーを始めたが、ある時を境に店を怪しい気配が包み謎に追いかけられる「木野」。封印されていた記憶の数々を解くには今しかない。見慣れたはずのこの世界に潜む秘密を探る6つの物語。村上春樹の最新短篇集。(文庫解説より)

映画「ドライブ・マイ・カー」の原作が収録されている短編集「女のいない男たち」を読みました。村上春樹の本を読むのはうん十年ぶりですが、結論から言うと、この短編集、非常に良い作品だと思いました。

このタイトルから誰でもヘミングウェイの"Men Without Women"を思い起こすでしょうが、ヘミングウェイの作品が「男だけの世界」というニュアンスであるとしたら、この作品は、まさに女を失ってしまった男の物語である、と村上春樹氏本人が前書きで語っていました。

全部読んでみてわかりましたが、映画の「ドライブ・マイ・カー」は同名のタイトルを物語の主軸にして、妻のキャラクターは「シェエラザード」から、主人公の家福のキャラクターは「木野」から肉付けをされているのがわかりました。この短編集の作品の根底にあるテーマは共通したものがあるので、無理なくミックス出来たのだろうし、これは非常にうまい脚本だと、あらためて感心してしまいました。

何だか毛嫌いして長く読まずにいた村上春樹作品ですが、こうしてきちんと向き合って読んでみると、文章も素晴らしいと思ったし、物語の構築も見事だな~と思った。

男女の関係というものの本質を、静かな目線でとらえていて、これはファンが多いのもわかる気がしました。人物の描き方がニュートラルで、日本の土着的なものを感じさせないので、これが外国人にもうける理由だろうと思ったり、色々と感じる事の多い読書となり楽しかった。

ただ、毛嫌いする人が多いのも、これはこれでまたよ~くわかりました。

それはただ一言、外国にかぶれすぎなんですよね。それは趣味的な言及だけではなく、文章全体が外国の小説みたいなんですよ。それは登場人物の話し方にもあらわれているし、人物造形、生活スタイル、ありとあらゆるものに外国のなにがしがひそんでいるんですよね。

でもこれこそが彼のスタイルでもあるワケだから文句はありませんが、ところどころに感じるスノッブな箇所にカチンとくるのも事実。

この短編集だと、「女のいない男たち」の中で読んだこの文章にイラ!としました。(笑)

この小説の中のエムという女性は、かつて主人公の男と恋人関係にあった。エムの突然の訃報により、彼はエムの事を回想しているんだけれど、エムはいわゆるエレベーターミュージックと呼ばれる、あたりさわりのない軽音楽が大好き(パーシー・フェイスだとかポール・モーリアとか)で、いつもそういう音楽をBGMに2人は愛しあっている。

以下、小説の文章(文春文庫298ページから抜粋引用させていただきました)

前略 ~ 「天国ではきっとBGMにパーシー・フェイスの音楽が流れている思う。ねえ、もっと背中を撫でてくれる?」
「いいよ。もちろん」と僕は言った。「あなたは背中を撫でるのがとてもじょうず」
僕とヘンリー・マンシーニは、彼女にわからないように顔を見合わせる。口許に微かな笑みを浮かべて。


いや、ヘンリー・マンシーニはエレベーター・ミュージックの作曲家じゃないから!あんたと顔なんて見合わせないから。おめぇ~、「スペース・バンパイア」のあの壮大なるテーマ曲聴いたことあんのかよ!?(笑)

まあ、そんなのにカチンとくるものの、この「女のいない男たち」も良い短編でした。素晴らしい文章表現がたくさんあるんですよ。

これは、何か長編を読んでみようと思っているところですが、何が良いのかな。今のところは「ねじまき鳥クロニクル」が良いかな
と思ってるのですが、何かお勧めがありましたら教えていただけると嬉しいです。




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この記事へのコメント

2022年03月19日 11:40
ごみつさん☆
遂に村上春樹、読まれたのですね!?
短編だと読みやすいし、ごみつさんが良かったとおっしゃってるから、私もいよいよ読もうかな??
そしてごみつさんのツッコミ最高!
私も多分同じような部分でカチンとくるんですよね。村上春樹と石田衣良にはイライラさせるものを時々感じてしまって、「ねじまき鳥~」も家にあるけど読んだことないです(笑
2022年03月19日 17:39
ごみつさん、こんにちは。
女のいない男たち、私も読んだのですが、感想は書いていなかったみたい。残念。
私はわりと気取った文章も好きなので、初期の頃の村上春樹は好きだったのですが、ある時から急に嫌いになってしまいました(国境の南、太陽の西の頃からかな?)でも新しいのが出ると、性懲りもなくつい読んでしまいます。

最近気になるのは、彼の文章に女性蔑視を感じることがあって。それと真面目な人とか、地方の人とか、ちょっと馬鹿にしているようなところがないですか?

ヘンリー・マンシーニは、たしか他の小説でも出てきましたよ。彼は、H・マンシーニを優等生的?面白味がない?小市民的?なイメージのラベルとして使っているような気がします。
ごみつ
2022年03月20日 02:14
ノルウェーまだ〜む 様

こんばんは。

ノーベル賞の話題に乗り始めてから、何か読んでみるか〜と思っていたもののどうしても食指が動かなかったのですが、この映画がきっかけで読めて良かったです。

あちらこちらにイラ!ポイントがあるのですが、とても良い短編集だと思いました。

映画の「ドライブ・マイカー」見てると、色々興味深く読めると思います。短編集なのも良いんですよね。

是非是非ご一読を。お勧めします。😆
ごみつ
2022年03月20日 02:21
セレンディピティー さん

こんばんは。

「女のいない男たち」はわりと新しめの短編集だったんですね。
私はこれと、大昔に「TVピープル」を読んだだけで、長編も読んでないし、まだ作家性がよく掴めてないのですが、今のところ、それほど差別的なものは感じてないかな・・。

気に入らないところがありながらも読み続けているのは、やっぱり彼の作品に力があって、魅力を感じるところがあるからなんでしょうね。

それにしてもヘンリー・マンシーニをそんなアイコンとして使っているとは。この作品では侮蔑している感じはなかったけど、しつこく使ってほしくないな〜。😅
kinkacho
2022年03月29日 20:06
ごみつさん、こんにちは。
村上春樹を読むとイラっとするkinkachoです。新刊が出るたびにニュースになるのもうんざり。ハルキストは何に惹かれるのか教えて欲しい...
アカデミー賞の結果も出ましたが、やはり落ち着くところに落ち着いたな~と。日本映画が作品賞を取れる訳ないじゃんと!ノミネートで浮かれてたマスコミにうんざりです。
ごみつ
2022年03月31日 00:13
Kinkacho さん

こんばんは。
結局、受賞出来たのは外国語映画賞だけでしたが、まあ良かったんじゃないでしょうかね。

これはアメリカの賞なんだから、メインの賞は米国の映画が受賞すべきだと思います。

春樹作品は、めちゃくちゃ久しぶりで読みましたが、イラっとする箇所は山程ありましたが、小説としては良く出来ている・・って感じました。

もう1作くらい何か読んでみようと思ってます。妹には1Q84を勧められましたが、あれ長いんだよな〜。😅